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2004年05月28日

経済学という教養 - 稲葉振一郎


「ナウシカ解読」の人による経済学論議。

はじめのほうはまだいいのだけど、途中からのスピードはついていくのが精一杯。
全体的に非常に啓蒙的な本。

マルクスが求めていた究極の共産的社会の姿と、自分が思い描いていた社会とがあまりに近似していてびっくりした。
発射された弾丸の角度や成分は違うのだけど、落ちるところは同じ、みたいな・・・。

最近の読書の流れは
人類学・思想・宗教 -> 歴史観 -> 認識論 -> 経済学
って感じ。
週末は久しぶりに神保町に行きそうなので、まとめて経済学の本でも買ってみようかと思った。

2004年05月26日

経済学のすすめ - 池上 惇


買ってから2年してようやく一通り読んだ。
というか、ここ2週間くらいでちょこちょこ読んだらスラスラ頭に入った。
もちろん完全に理解はしてないが・・・。

どっかのだれかが「人類学、社会学から経済学を作り直すべきだ」とか、まぁ最近の自分の中でも嫌悪感を抱いてる学問だからこそ勉強すべきだな、ってのがあったので、あえてもうちょっとかじりたいな、と思いつつある。

それにしても、「少子化を効果的に行うためには女性の機会損失をあるレベルまで大きくすることで対応できる」ってのはひどいなぁ・・・。

ようやくミクロ経済とマクロ経済(ケインジアン)の明確な違いが分かった。
めでたい。

超常現象をなぜ信じるのか? - 菊池 聡


とても分かりやすい超常現象論。

人間の知覚がいかに客観性とかけ離れてしまう可能性を持っているか、を平易に書いている。
でも信じたいと思う人は信じればいいし、まぁ好きにしてくれって感じ。

そもそも全ての人間が客観的・論理的に知覚・行動することを目指し始めたらとんでもないことになるのは誰にでも分かると思うし・・・。

魔女狩りが起きなきゃいいんじゃないの?

2004年05月21日

世間の現象学 - 佐藤直樹


いい!

つい最近阿部謹也の本を読んだばかりだったので、引用も含めて内容を噛みしめながら読むことが出来た。

「主観と客観」の問題についてもちょっとした議論もあって、面白い。
当然のように「世間」についての論考なのだけれど、この本を読んでいると日本で起きている日本独自な現象のほとんどがこの「世間」というシステムによるものだ、と説明できてしまう気がしてくる。

自分がへそ曲がりなのはどうやら色々と複雑な理由があるような気がしてきた。

2004年05月20日

ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読 - 多木浩二


アウラなき時代の芸術作品、って題でもよかったんじゃないかな、というベンヤミンの著述を丁寧に解説し、原文も載ってるナイスな本。

芸術の共時性、アウラ、人の感性の可能性・・・。
ライブに行くってことこそ、まさにアウラを求めた礼拝的行為だよな、と納得。

ゲームが総合芸術として再生する可能性について結構本気で考えさせられた。

ちょっとあまりにすんなり読み過ぎてしまった気がする。
ゆっくり読み返す必要がある本ナンバーワン。

2004年05月11日

日本人の歴史意識 - 阿部謹也


日本的「世間」に対する考察。

急いで読んだので完全に理解し損ねた気がする。
共通の価値観を持って内部に内向的時間的感覚を共有する社会構成。

う〜〜〜ん、もっと深く考えないと理解できない。

2004年05月10日

ハーメルンの笛吹き男 - 阿部謹也


「ハーメルンの笛吹き男」を下敷きにした中世ヨーロッパの生活散歩。
金枝篇の中世バージョンをスケール・ダウンしたようなイメージ。

「近代」が発達するまでは、世界のどこにも「人権」なんて考え方はなかったし、どこにでも虐げられた人はいたのだな、と感じた。

最後の方に出てきた、アマチュアの学者でリューネブルク手書本を探し当てたじいちゃんがとても印象的だった。

偶然にも同じタイミングで読んでいる「日本人の歴史認識」と同じ著者じゃん・・・と思ったら、この本を読むきっかけになった人物が同じことを思い出した。
確か彼は民主主義で卒論を書いていて、この辺りの文献を漁っていたので当然といえば当然。

2004年05月06日

動物と人間の世界認識 - 日高


視点の違い、というか発想の転換を与えてくれる本。

「人はみなそれぞれの地獄を抱えて生きている」という言葉を1年前から心に抱いて生きているのだけれど、この地獄=世界=イリュージョンと理解することでスルスルと読めた。

何がびっくりってこの本の著者が「利己的な遺伝子」の訳者ってこと。

認識は幻想で、本当の世界(なんてものがもし本当に存在するならば)は限りなく、我々はその部分部分を切り取って認識して言語化し、理解したつもりになっている・・・、と。

フランスで車に轢かれてしまうハリネズミの話が印象的だった。

2004年05月03日

悲しき熱帯 - レヴィ・ストロース


後編をようやく読み終えた。

結局前編・後編を合わせて1年くらいかけて読んだことになる・・・。
著者の視点から観察される情景が流れゆくままに過ぎていく。

視覚的な風景と、心情的な風景が極めて重厚な形でこめられていて、ちょっとした風景なのにも関わらず、立ち止まって考えさせられてしまったりする。

ナンビクワラ族(?)の暮らしの描写がとても好きだ。
はじめに「旅や冒険は嫌い」と言っておき、また最後の方で戻ってきたこの議論の中に興味深い点がいくつかあった。

結局人間はその文化や社会の当事者に成り得ない限り、全てを理解するのは不可能なのだ。
これは当たり前のことだけど、これはフィールドワーカーや、旅をして分かったつもりになってしまう我々の浅はかな思考に対して厳しくNOを主張している、と思った。

2004年05月01日

エデンの彼方 - ヒュー・ブロディ


最高。

2004年に入って読んだ本の中でインスパイアリングだった度でいうとトップ3に間違いなく入る。

創世記という、世界で最も有名な神話の世界に関する洞察や、この本が主眼を置いている狩猟採集の民の神話。

人間が生きていくのに一番必要なのは「誇り」なのではないか、とよくよく思うのだけど、この本を読んでもそれを感じた。

人類の文化の変移について少しでも興味があればこの本は最高に楽しく読めると思った。