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2009年02月24日

聖霊の守り人 - 上橋菜穂子


Title: 精霊の守り人 (軽装版偕成社ポッシュ)
Author: 上橋 菜穂子
Price: ¥ 945
Publisher: 偕成社
Published Date:

なかなか素敵なファンタジー。

アクションシーンのスピード感、ステレオタイプになりすぎない世界観、強者の歴史と弱者の民話の対比などなど、様々な要素がバランスよくまとまっている。一部ファンタジー世界としての構成設定のつめが甘いような印象を受けるし、鈍くさい一部の会話も気になるけど、読み終わって「面白かった!」と言える本だった。

2009年02月23日

感染爆発 - マイク デイヴィス


Title: 感染爆発―鳥インフルエンザの脅威
Author: マイク デイヴィス
Price: ¥ 1,680
Publisher: 紀伊國屋書店
Published Date:

鳥インフルエンザの「感染爆発」がいかに大きな脅威になりうるかについて論じた本。
畜産産業の工業化と巨大なスラム街の発生、それに世界中を流れる人の動きによって、20-30年前では考えられなかったような形でウィルスが変異を遂げて世界中にばらまかれてしまう可能性について警鐘を鳴らしている。

鳥インフルエンザウィルスの集団感染というと、1997年に東南アジアで発生したH5N1型が記憶に新しいところだけれど、1918年に流行したスペイン風邪(スペインが発生源なのではなくて、当時中立国だったスペインのメディアが真っ先にウィルスの流行を報じたためこう呼ばれるらしい)では、1億人もの人が亡くなったという試算もあるのだそうだ。

特定の宿主に対しては無害で、特定の宿主に対して猛烈に牙を剥き、変異を繰り返しながらずる賢く生き延びてきた鳥インフルエンザのウィルスの存在はまさに驚異的。製薬会社にとって負担の大きいワクチン開発&製造をいかにして推し進めていくか、また、ワクチンが最も必要とされている発展途上国の子供や高齢者達にどうやって行き渡せられるかといったことに関しても、問題提起が行われている。

2009年02月11日

行動経済学 - 友野典男


Title: 行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)
Author: 友野 典男
Price: ¥ 998
Publisher: 光文社
Published Date:

「行動経済学」とは、経済人(100%合理的な神のような人間で)を前提とした経済学ではなく、人の認識能力の欠陥や、感情のブレといった要素を組み合わせて経済活動を研究する比較的新しい学問。

数理経済学の「カタさ」にウンザリしている自分としては、この学問コンセプトには大いに共感できるところがあるのだけど、実際の所まだまだ黎明期の段階で、学問としてのまとまりに欠ける印象を受けた。一歩間違えると(間違えなくても?)胡散臭い社会学に脱線してしまう危険性を孕んでいるような気がするようなしないような・・・。

本自体にはなかなか面白い実験結果やネタが詰まっているので興味のある人は読んでも損はしないと思う。

2009年02月05日

感謝されない医者 - 金田正樹


Title: 感謝されない医者―ある凍傷Dr.のモノローグ
Author: 金田 正樹
Price: ¥ 1,680
Publisher: 山と溪谷社
Published Date:

凍傷の治療なんか好きじゃないのに、いつのまにか日本を代表する凍傷ドクターになってしまったドクターの本。

秋田県の白神山地の麓に生まれ育ち、山に魅せられるようになって海外への遠征隊などに同行するようになった著者が見てきた凍傷患者達と、その治療過程が綴られている。山で負った凍傷の話も興味深いのだけど、それ以上にソ連侵攻時代のアフガニスタンに赤十字の医師として派遣された時の体験のほうが壮絶な体験であるように感じられた。

凍傷になる過程や、典型的な症例などなど、様々な興味深い事例が紹介されているので、雪山登山をやる人は目を通しておくとメリットがありそう。

凍傷にならないためには

- 冷やさない
- 濡らさない
- 行動時間は短く
- ストレスを軽減する

といったあたりを徹底する必要がありそう。まぁ、結局難易度の高い山をやってるときは、そんなこと言ってられないのも確かなのだけれど・・・。

本人の意思とは関係なしに、凍傷をよく見るお医者さんということで登山をする人間から認知されている著者の暖かい視線を感じることができる本だと思った。

2009年02月02日

古代日本の超技術 - 志村史夫


Title: 古代日本の超技術―あっと驚くご先祖様の智恵 (ブルーバックス)
Author: 志村 史夫
Price: ¥ 903
Publisher: 講談社
Published Date:

「古代日本」と行ってるわりに、奈良時代の寺院建築の技術に関する言及に偏っているような気もするけれど、細かいことは置いといて面白い本。

日本独自の木材建築や、1000年経っても朽ちない釘を作った「たたら」での鋼作り、五重塔の心柱の話などなど、最高に手間暇をかけて、自然の材料を知り抜いた職人の手による傑作がいかに作られたかを科学的に解明する試みが行われている。

西欧的科学主義ってのは致命的に文明・文化を質から量へと変換することに成功してきたと思うのだけど、その過程で本当にたくさんのものが失われてしまったのだなぁ、という驚きを改めて感じた。