« 思春期ポストモダン - 斉藤環 | メイン | 「人間嫌い」のルール - 中島義道 »

ほんとうの環境問題 - 池田清彦

地学・環境学


Title: ほんとうの環境問題
Author: 池田 清彦, 養老 孟司
Price: ¥ 1,050
Publisher: 新潮社
Published Date:

しごくまっとうに環境問題について論じた本。

いわゆる「環境問題」には複合的な要因が絡んでいて、一概に「これが正しい」と言い切れないところに難しさがあることを教えてくれる。安易なメッセージがメディアに氾濫し、何も考えずにそういったメッセージが鵜呑みにされている現状に対する警告の書。

「環境に優しい」なんて言葉は、そもそも定義されえない言葉だと思う。地球上の環境(システム)は、ヒトがいようといなかろうと長い年月を通じて大きな変化を続けてきたし、人間の文明もまたその一部と捉えることもできる。

ヒトが「環境によい」という時、それはヒトにとって「よい」という意味で使われていることが思いのほか多いように感じる。これはどういうことなのだろう?

ヒトが「環境」について論じるとき、「環境」と呼ばれるシステムは「ヒト」を除外して機能しているような構図でもってして論じられることが多い。まるで、環境にとって「ヒト」という生物は存在しないかのように。

でも、現実問題として僕たちは生きているわけだし、世界中の人が「僕はもう生きるのがイヤになりました」と言って死滅しない限りは「環境」に干渉して生き続けていくしか道はない。

農業をやろうと、木を切って燃やしたり、石油を掘って燃やしたり、その結果として戦争をしたりしようと、環境が「ヒト」によって影響を受けていることに違いはない。

地球上のリソースは、人類の歴史を通じて「ヒト」の欲望を満たすために使われてきたし、残念ながら「ヒト」はそれを続けられる限りブレーキをかけることをしてこなかった。

これから40-50年の間に石油に変わるリソースを人類が見つけだせるのか、というのは興味深い問いかけだと思う。
エンジニアの視点からすれば、「きっとどうにかなる」なのだけれど、これはひょっとすると楽観的過ぎるのかもしれない。