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思春期ポストモダン - 斉藤環

心理学・精神分析


Title: 思春期ポストモダン―成熟はいかにして可能か (幻冬舎新書)
Author: 斎藤 環
Price: ¥ 777
Publisher: 幻冬舎
Published Date:

精神分析者として、「引きこもり」や「不登校」の若者の臨床に携わっている著者による「若者論」。

- 豊かな社会は、未成熟に対する寛容度が高い
- 人それぞれが持っている気質は、様々な社会構造において異なる適応性を持つ。ひとつの社会に対する適応度が高ければ「健全」とされるし、適応度が低ければ「病的」と診断される。
- 精神病は、患者自身が勝手に発症するものではなく、社会・環境との関わり合いの中で発症するものである
- それぞれの社会構成要素(個人、家族、学校、職場)が健常であるにも関わらず、そこから生まれてくる関係性が病的な性格を帯びてくるようなこと、これが著者の言う「病因論的ドライブ」という仮説
- ラカンの言う「人の欲望、判断や行動はすべて“症状”である」という立場を取ると、ひきこもりと言われる人たちは最も健常であると考えることができる

・・・などなど。その他にも、「ひきこもり系」と「じぶん探し系」といった人間の「活動モード」に関する言及とか、興味深い意見が詰まっている。

人が豊かになればなろうとするほど、健康になろうとすればなろうとするほど、それまで気にならなかったような微細な「貧しさ」だとか「病」がムクムクと頭をもたげて、人の心の中に巣くってしまうものなのだと思う。

つまるところ、人間は一生「シアワセ」になんてなれっこないのだ。