« 11月の走行距離 | メイン | Continental Sprinter »

トレーニングについて考える(2):筋繊維の種類と働き

自転車競技のトレーニングについて考えてみるシリーズその2。

「筋繊維の種類と働き」

**

人の筋繊維は、大きく分けて

- Type I (slow-twitch(遅筋))
- Type II (fast-twitch(速筋))

に大別される。
Type Iが長時間の運動に向いているのに対し、Type IIは短時間で強い力を出すのに向いている。Type IとType IIの比率は人それぞれで異なり、遺伝的要因が強いとされる。

Type Iの繊維は、ATPの生成に酸素を必要とするのが特徴。炭水化物あるいは脂肪を燃料とし、疲労耐性は強いものの収縮速度が遅く、大きな力を出すのには不向き。SO(Slow Oxidative)繊維と呼ばれる。

Type IIの繊維は、Type IIaとType IIbに別れる。
Type IIaはFOG(Fast Oxidative Gylcolytic)繊維と呼ばれ、炭水化物を酸素あり(好気的代謝)・なし(嫌気的代謝)両方のモードで燃やすことができて、Type Iの繊維に比べると収縮速度が速いのが特徴。
Type IIbはFG(Fast Gylcolytic)繊維と呼ばれ、炭水化物を酸素なしモード(嫌気的代謝)でバカスカ燃やすことで、速くて強い収縮ができるのが特徴。

FG繊維はエンデュランストレーニングによってFOG繊維に転換することが可能とされるものの、FG繊維はグリコーゲンを他の繊維よりも多く蓄えることができるので、そのメリットは捨てることになる(爆発的なパワーを持続できる時間は減る)。

**

筋繊維は「縮む」方向にしか力を発揮することができない。例えば、太ももには表(大腿伸筋群)と裏(大腿屈筋群)に筋肉があって、相互の働きによってはじめて膝の屈伸動作が可能になる。

筋肉の働きには、筋繊維が短くなりながら力を発揮するコンセントリック収縮と、筋繊維が伸びながら力を発揮するエキセントリック収縮、さらに筋繊維が動きを伴わずに収縮するアイソメトリック収縮がある。

筋肉を動かすのは脳内の刺激ではあるものの、どの種類の筋肉繊維を使うか意識的にコントロールすることはできない。「弱い運動強度では小さなSO繊維が動員され、運動強度が上がって収縮力が強まるにつれて、より大きなFOG、FG繊維が順次動員される」としたのがHennemanの「サイズの原理」。

一般的に、筋トレは

1. 筋繊維の肥大
2. 筋繊維の太さは変えずに、断面積あたりの筋力を増大させる=神経系の向上

の二種類に分かれる。
それぞれの目的に応じて適切な負荷のかけ方&インターバルの取り方があるようなのだけど(このへんは専門書を読んでくださいプリーズ)、神経系の向上を行うためにはエキセントリック収縮が有効とされる。これはなぜかというと、エキセントリック収縮では「サイズの原理」が適用されず、速筋からはじめに使われるので、大きな負荷をかけることなく効果的に速筋を鍛えることができる、ということ。

**

まとめると、筋肉にもいろいろと種類があって、燃料の燃え方と同じようにそれぞれの運動強度にあわせた形で最適化されたシステムを持っている、ということらしいです。

ロードレースのようなエンデュランススポーツでは、SO/FOG繊維の働きを最適化させることで、好気的代謝の領域でどこまで強いパワーを出せるかが大事になってくると同時に、FG繊維を利用した嫌気的代謝の領域でのアタックやスプリントにも対応しなければいけない、ということなのでしょう。

「スプリンターは生まれてくるもの」とはよく言われることですが、これは遅筋と速筋の割合が生まれたときから決まっていることに由来するようです。スプリンタータイプはトレーニングによってFG繊維をFOG繊維に転換することでTTにも強くなれますが、ノン・スプリンタータイプの場合はFG/FOG繊維が限られているので、スプリント能力は鍛えても限界がある、と。

次回は、LTについてまとめる予定。

**

この記事をまとめるにあたり、以下の資料を参考にしました。

- Bicycling Science
- 目でみる動きの解剖学
- Dr.マサコのスポーツ医学講座


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.yama-kei.org/mt/mt-tb.cgi/6952

コメントを投稿

About

2009年12月03日 06:32に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「11月の走行距離」です。

次の投稿は「Continental Sprinter」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type 3.36
おすすめ自転車関連本