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マルコ・パンターニ 海賊の生と死 - ベッペ・コンティ

稀代の名クライマー、マルコ・パンターニの生き様を綴った本。

これだけ波瀾万丈なドラマに彩られた人生を生きた人も少ないだろう。若い頃から自転車乗りとしての資質を見いだされ、そのカリスマ性からロードレース界のスターの座を射止めるも、不運な事故や怪我、それにドーピングスキャンダルに泣かされ続け、悲劇的な最期で短い人生にピリオドを打ったパンターニの姿を克明に描き出している。

EPOによるドーピングが常態化していた90年代のレースシーンではあるけれど、その中にあってあれだけ突出した走りを見せたパンターニは、やはり途方もなく優れたクライマーだったのだと感じる。天与の才能とむき出しのガッツ、それに茶目っ気を兼ね備え、人間的な弱さまでも表に出してしまうパンターニは、いつでも人の注目を奪わずにはいられない。そして、その注目の結果が彼の人生を狂わすことになってしまったのだろう。

レースの戦い方という観点から見れば、彼のアタックはいつも無謀で無計画的なところがあるし、長いステージレースの中で味方を作るという政治的努力も行わず、あくまで一匹狼的に勝利を求めた彼の戦略は「戦略」と呼べるものではなかった。それでも、観客の期待に応えるため、そして何よりも自分の内なる衝動に駆られるようにしてアタックを繰り返したパンターニの姿は、痛々しくも勇敢で、今もって多くの人たちの心を打つのだろう。

不必要に原語(イタリア語)を使いすぎている翻訳に不自然な印象を受けたものの、パンターニに関する資料としては一級品の価値を持った本。


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2009年04月24日 07:04に投稿されたエントリーのページです。

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