日経サイエンス(2008/8)に面白そうな記事を発見したので図書館で借りて読んでみた。
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0808/200808_054.html
いかに自転車レースにドーピングが蔓延しているかという状況説明と、「ドーピングはなぜなくならないのか」をゲーム理論によって解説している。
1998年のパンターニの神がかった山岳ステージでの活躍も、昨年のツールでのリッコやピエポリの活躍も、全てEPOの力に頼っていたのかと思うと悲しくなってしまう。CSC(現SAXOBANK)のリース監督も現役時代はEPOを使うのが「選手生活の一部」だったと告白しているし、1990年代はプロサイクリストにとってドーピングが本当に「当たり前」のことだったのだろう。チームぐるみのドーピングももちろんだけど、「みんなやってる」「やらないと勝てない」とドーピングを進める闇ドクターの暗躍もあったようだ。
プロの自転車レースにこれだけドーピングが蔓延してしまったのは、
- 実際に効果がある
- もともとドーピングが違反行為ではなかった
ことが大きそう。
ドーピングが蔓延しはじめる前の段階で、レース主催者側が断固たる措置を取ることができていれば、少なくとも昨今のような状況は防げたのかも知れない。と同時に、山岳ステージでの英雄的な走りを望んでいるのは誰よりも我々観客なわけで、このあたりがまた問題をややこしくしているような気がする。
ゲーム理論的に考えて、ドーピングをなくすには「正直者が損をする」状況から「裏切り者が損をする」状況に変化させるしかない、というのが著者の結論。当たり前っちゃ当たり前だけど、ズルをする側とそれを追っかける競争は、果てしのないいたちごっこになる宿命を抱えているのが難しいところ。まぁ、ここ数年間でドーピングに対する風当たりは強くなっているし、UCIも断固たる処置を取るようになっているので「ドーピングが当たり前」という状況からは脱却しつつあるのだろう(と願いたい)。
ドーピングに関して言えば、最近読んだ「ドーピング毒本」がなかなか面白かった。
Title: 北京五輪もヤバい!? ドーピング毒本 (洋泉社MOOK)
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Price: ¥ 1,050
Publisher: 洋泉社