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最暗黒の東京 - 松原岩五郎

ノンフィクション


Title: 最暗黒の東京 (岩波文庫)
Author: 松原 岩五郎
Price: ¥ 588
Publisher: 岩波書店
Published Date:

明治25,6年頃の、日本に本格的な産業革命の波が押し寄せる前の東京の貧民層の生活を描いた本。「国民新聞」の紙上で連載されていた記事をまとめたもの。

東京の下町という名の吹き溜まりで、近代化の道をひた走る日本から「置き去りにされた人たち」の記録で、著者の松原岩五郎は実際にそういった人たちが住む貧民窟に住み込み、最下層の人たちがやる仕事を実際にこなすことで彼らの実態に迫っている。当時東京の下町に住み込んで車夫や残飯売り、日雇い人夫、見世物師といった仕事で日々の糧を得ていた人たちの生活は壮絶としか言いようのない貧乏&みじめさ。いかに「一億総中流」という言葉が幻想であるにせよ、当時の貧民層の暮らしに比べれば現代の日本人の「貧しさ」なんて可愛いものなんじゃないかと感じてしまう。

漢文調の文章が少々読みにくいのが気になるものの、教科書やテレビには出てこない明治期の人々の生活の一端をかいま見せてくれる貴重な本だと思った。