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孔子伝 - 白川静

伝記


Title: 孔子伝 (中公文庫BIBLIO)
Author: 白川 静
Price: ¥ 940
Publisher: 中央公論新社
Published Date:

内容の詰まった孔子伝。

一言で言うと、孔子の思想がいかにして生まれたのか、ということについて書かれた本なのだけれど、論語に限らず中国の歴史、人物、思想、漢字についての膨大な知識が詰め込まれているので、じっくりと読み進めていたら3週間もかかってしまった・・・。

論語は一通り読んだし、孔子という人についても自分なりに勉強はしていたつもりだったのだけれど、孔子が生きて活動した時代背景や、彼以外の古代中国の思想家についての知識が圧倒的に足りていなくて、なかなか刺激的な読書になった。

思うに、宗教家や思想家と呼ばれる人が様々な議論を通して辿り着くのは、大抵の場合において「善」(イデア)のようなものがいかにしてあるべきか、そしてその根拠は・・・というポイントだ。孔子の場合、周公が行っていたとされる政(まつりごと)をそのような位置に想定することで、彼の「あるべき姿」を規定したのだと思う。キリスト教の場合では、「神」という圧倒的存在が全ての善悪、価値観、物事の根拠であることを想定していて、その上でキリストという実在を1枚持ってくることによって分かりやすさを演出したんじゃないかと思う(こういう適当なことを書くと、怒られそうだけど・・・)。

孔子の時代の混沌とした政治的・文化的状況と、様々な技術や文化の積み重ねによって混迷の度合いを深めている現代とでは、全ての条件が異なっているように見える。けれど、人間そのものはほとんど進化していないわけだし、人のあり方、社会のあり方について考え、説き続けた孔子の言葉は、今の時代にあってもその価値を全く失わないのだと感じた。