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ものぐさ精神分析 - 岸田秀

心理学・精神分析


Title: ものぐさ精神分析 (中公文庫)
Author: 岸田 秀
Price: ¥ 920
Publisher: 中央公論社
Published Date:

独特の魅力を持った心理学の本。
「セルフ・メディケーションとしての心理学」という感じで、著者自身が半生を通じて経験したり考えたりしたことが濃密に含まれていて興味深い。

「日本」という国家の精神分析や、宗教、性のタブー、そもそも心理学って・・・といった問いを含め、他人の理論に頼りすぎず独自の視点から心理学的アプローチを行っている。心理学に特別興味がなくてもサクサク読める。

下手に斜に構えたような議論を用いることなく、ストレートかつ鮮やかに一般的に信じられている「幻想」を解き明かし、価値の転換のようなことを上手にやってのけているので実に読み応えがある。ところどころ「んん?」と思わされるところもあるが、全体的に彼の意見には賛成できるところが多い。「忙しい人と暇な人」の議論なんて、本当にその通り。「人間の歴史上の“悪事”で、“正義”の名を借りて行われなかったものはない」とか、実にナイス。

多くの哲学者にもいえることだけれど、人間に関してこれだけ多くのことを語れる著者もまた、人間(&生きること)に関して実に多くの悩みを持って生きてきた人なのだなぁ、と感じた。