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路上のエスノグラフィ―ちんどん屋からグラフィティまで - 吉見 俊哉(編), 北田 暁大(編)

経済学・社会学


ストリート・ミュージックやパフォーマー、チンドン屋、サウンドデモ、そしてグラフィティをアカデミックな視点から調査・分析した本。東京大学の学生の調査研究がベースになっている。

現代における都会の「路上」とは、生活の一部であると同時に現実世界との繋がりの場所でもあり、実に不思議な場所であるように思われる。過度に管理された都市空間はパフォーマーにとって居心地の悪い空間となり、その無機的かつ匿名的をうち消すかのようにして、上記のようなパフォーマー達が活躍する。

個人的に、チンドン屋にはとても興味がある。子どもの頃はよくパチンコ屋さんの新装開店でチンドン屋さんが街を練り歩くのに出会ったことを思い出す。子どもながら、あの異様な格好をして賑やかな音楽を奏でる人たちは、街の中に部分的に非日常的な空間を生んでいたことに驚かされていたのだろう。
最近は渋谷のHMV周辺で若者三人組のチンドン屋さんに出会ったのだけれど、思わず嬉しくなってついていこうかと思ってしまった。最近の若者達がチンドン屋さんとして活動していることや、戦前から活躍していたチンドン屋さんの親方のインタビューは実に興味深いものであった。

最後に調査されているグラフィティとは、町中でたまに見かける落書きのようなもののことを言うらしい。ヒップホップカルチャーに影響を受けている、とか、グラフィティにも色々と種類があることは初めて知った。法律的に許されていない行為になろうとも、自分の美的センスだったりコミュニケーションだったりためにグラフィティを描く彼らは、都会という空間の中での自己を再認識するための演出道具としてグラフィティをやっているように感じられた。