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生と死の分岐点 - ピット シューベルト

山登り


ドイツの山岳会の安全委員会委員長として、長らく遭難事故と向き合ってきた著者が山における遭難のリスクを実例を沢山挙げながら解説している非常にドイツ的な本。

山の天気から雷にはじまり、ザイルやビナ、シュリングなどの登攀用具の細かい使い方まで、実地的な経験に基づいた非常に入念かつ詳細な議論が行われている。
ハーネスやピッケルの選択や使い方が日本で広く使われているものと少し違ったりするのだけれど、クライミングにおけるリスクの説明として非常に筋の通った説明が多い。
ザイルで体を確保しながら岩を登っていく、という行為の危険性はここ50年以上の間本質的に変わることなく沢山の人たちの命を奪ってきたのだ。

実際に本番のクライミングなんかをしている時は、コンディションの関係上ゲレンデの時に比べていい加減なことをしてしまうことがあると思う。そしてそのひとつひとつのアクションがこの本で紹介されているリスクに直接結びつく可能性を常にはらんでいるのだな、と思った。

この本は登山技術の解説本、というよりは「事故のケーススタディー紹介本」、として理解した方がよいだろう。
何が起こるか分からない山の中で、沢山の物言わぬクライマー達に接してきた著者だからこそ書くことができた本なのだ。