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進化しすぎた脳 - 池谷祐二

サイエンス・テクノロジー


よい本。

読んでいるそばからノートを取ろうとしすぎて、結局諦めた。
「大脳生理学」の研究者で、「海馬」などでも有名な池谷さんがニューヨークの日本人高校生に講義をして、一緒に考えていった内容が収められた本。

面白いと思ったポイントをまとめると、

- 身体性が脳の限界を決めている
- 咽頭が「心」を作った (言葉の発生)
- 脳のなかで特定の情報がクオリア(覚醒感覚)を経て言葉に生まれ変わる作用と、身体的な反応を起こす経路は異なる
- 人の「意識」はたくさんの無意識の働きによって成立している
- 「記憶」するために、脳では「汎化」が行われる
- 「あいまい」な記憶の仕組みは神経の構造やシナプスの仕組みに因っている
- 脳は、極めてシンプルな神経の仕組みによって構築されることによって汎用な機能性を提供している

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「現在人間や他の動物が「視覚」を通して構築している世界、というものは、偶然(かほんの少しの必然で)特定周波数の電磁波に反応する「目」という機関が発生したことによるものである」みたいな認識は、日高 敏隆さんの「動物と人間の世界認識」で出会っていたのでそんなに驚かないで済んだ。
それでも、やはりこういう考え方はとても斬新で思考方法の転換を与えてくれる。

他にも面白いなぁ、と思ったことをメモ。

- 外から入った情報が「言葉」として認識されるには0.5秒かかる
- 網膜のセンサー数や約100万個
- 網膜で色を関知する細胞ははじっこのほうにはほとんどない
- 扁桃体は恐怖を関知することで、生物の「本性」にブレーキをかけている

脳に関する興味深い本は数あれど、簡単な言葉とわかりやすい説明で脳の一番面白いところを解説してくれるこの本はとても貴重だと思った。