なめくじ艦隊 - 古今亭志ん生
伝記
志ん生の半生記。
とにかく「貧乏も楽しい」の一言につきる。
昔の芸人の生活やメンタリティーがとてもよく出ているし、志ん生が頑張って来れたのはまず「生活」があって、それから「人の情け」があったからなのだなぁ、としみじみと納得してしまった。
家賃が「タダ」の貧乏長屋での生活や東京大空襲の真っ最中にビールを飲んでいた話、そして満州での苦労・・・、この人の人生ほどネタに彩られた人生も珍しい。
「人間なんてものは、当たりまえのことで嬉しいなんてことはあるもんじゃなくて、当たりまえでないことがうれしいんですよ。」
「しかし、もともと落語てえものは、おもしろいというものじゃなくて、粋なもの、おつなものなんですよ。
それが今では、落語てえものは、おもしろいもの、おかしいものということを人々がみんな頭においているんですが、元来そんなものじゃないんですナ」
「古い噺てえものは、何べんきいても味があるけれど、そういう噺って、何万という噺の中から残った、本当の名作ばかり一つか二つかです。だから、そういう噺には捨てがたい味がある。」
「むかしのいくさというものは半分は、その国の城主のいろいろな道楽でやったもんらしいですね。いくさに行くんだから、すがたなんぞどうだってよさそうなもんなのに、金の鎌形のカブトでもって、ひおどしのヨロイで、きれいなようすを見せる。そうするもんだから、向うも負けてはいない。サァ、おれの格好をみてくれというわけで、相手に負けないようないでたちでいくさに出かけるんですね。」