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クロモリフレームは硬い?

久しぶりに乗ったMaster X-Light号の感想をメモ。

- カンパのギアシフトはカッチリ感がなくて1テンポ遅れる印象
- ゼロ発進時に踏み切れない印象
- 走行中の安定感は高い
- 体重をかけたダンシングがやりやすい
- 細いフレームは(ビジュアル的に)好み

Master X-Light号は、ホイールがNeutronでタイヤはVittoria Open Corsa EVO-CX、コンポは07ベローチェメイン(エルゴとFDだけは08ケンタウル)という構成。ハンドル&ステムが3Tの安物(完成車付属)で、シートポストが今は亡きSELCOF。フレームのサイズ&ジオメトリはExtreme-Power号と一緒で、ポジションの違いも1cm未満。

カンパのギアシフト操作にはよくも悪くもフィーリングが要求される感じ。クラッチ操作みたいなもんで、シマノのカッチリした操作感よりもこちらを好む人はいそう。とはいえ、ギアシフトのレスポンス自体は比べるのが申し訳ないほど7900Duraの方が格上。特にフロントをアウターにかけるときのストレスフリー感はサイコー。

ゼロ発進で踏めない理由は謎。走り出しの時に使うギアはほぼ同じ(53x23か50x23)だし、クランクの剛性の違いなのか、あるいはフレームの特性なのか・・・。

「体重をかけたダンシングがやりやすい」のは、恐らくクロモリフレーム独特のしなりみたいなものなんじゃないかと思う。筋肉をできるだけ使わないようにして、体重だけで踏み込んだときにリズムカルに坂を登っていける印象。反応のよいカーボンフレームだと、グイッグイッと踏み込んだときにタメが発生しないのでリズムを作るのが難しい。

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Master X-Lightが典型的なクロモリフレームだとは思わないのだけど、やはりクロモリフレームには踏んだ時の「テクスチャー」というか、「踏み味」みたいなものがあるように思う。

思いっきり主観でモノをいうと、世に出回ってる「クロモリ=柔らかくて身体にやさしい」「クロモリ=振動吸収がよい」なんてのは全部ウソ。どっしりとした安定感やバネっぽい感触は感じることができるけど、全体的な乗り心地という意味ではカーボンフレームの中でも硬い硬いと言われているExtreme-Powerのほうが上。

クロモリはフレーム素材として長く使われてきた分、最終的なライドエクスペリエンスが安定しているのがメリット(多分)。このチューブを使ってこのジオメトリで作ればこういう自転車が作れます、という経験値がマキシマムに高まっているので、まだまだ試行錯誤&研究開発が続いている新素材に比べて、期待した通りのフレームが作りやすいのではなかろうか。

クロモリのよさが生きるのは、ロードレーサー経験の浅い初心者や、かっ飛ばして走らないツーリング系ライダー。恐らくだけど、初めてロードレーサーに乗る人は軽くてレスポンスがよいカーボンフレームよりも、重いけど安定した走行感を持つクロモリフレームに乗ったほうがすんなりとロードレーサーの世界に入れるように思う。

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http://homepage1.nifty.com/firstsource/etc/crmo.htm
このあたりの記事を読む限りだと、クロモリを使ったロード用フレームを突き詰めていくと

- 三角形を大きくするためのホリゾンタルフレーム
- 細くて適度に柔らかいチューブ
- ラグ接合

というところに落ち着くのだなぁ、と勝手に納得。
アルミやらチタンやらカーボンやらといった別次元のフレーム材料がやってくる前までは、フレーム設計にはひとつのパターンがあって、みんなその範疇の中で創意工夫を凝らしてきたのだと思う。

コルナゴに関して言えば、1983年に発表したMasterが今なおベースモデルとして存在していて、カーボンフレームのはしりとなったC-40が1990年代に大成功を収め、その後継として出したC-50もヒット・・・と思ったら、Extreme-Power/C以降の世代ではカーボンを活用した自由なフレーム設計を推し進めてきた他社に苦戦している・・・ってな感じなのかな。

冷静になって考えてみると、コルナゴのトップエンドモデルの基本設計はかれこれ25年以上変わっていないわけで、これってすごいことだな~と感心してしまう。技術革新の激しいデジタルデバイスじゃないんだから、無理して毎年ニューモデルを出すのではなくて、マイペースで製品開発したものを出していけばよいと思うんだけど、ビッグブランドになるとそうも言っていられなくなるのだろうな。

コルナゴのさりげなく偉いところはサイズ展開。ホリゾンタルで14サイズ(国内は4サイズ)、スローピングで8サイズ(国内は3サイズ)をラインナップしているあたりにコルナゴのレーシングブランドとしての良心を感じる。これを実現するには、それぞれのサイズで異なるラグやチューブを用意しなければならないし、冶具の設計から何から何までをサイズごとに準備しなければならないので、とてつもなく大きなオーバーヘッドになってしまう。

個人的にはホリゾンタル&ラグの古典的なフレームの作りは大好きだし、イタリアンなメーカーの代表格としてのコルナゴには頑張って欲しいと思っている。

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我が家の自転車3台。
3台とも「ホリゾンタル」「ラグ接合」。


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コメント (4)

「猛レース」から検索してたどり着きました、こーざいと申します。
ヤビツ速いですね…。

クロモリ乗りとしてコメント。
やっぱりクロモリ(鉄)は弾性率が高いのが良いのでしょう。
鉄の弾性率から考えて、バネ感を感じない剛性も出せるはずですがそれでは鉄のメリット(売り文句?)がなくなる&重くなるので、「バネ感を演出している」ところがあると思います。

ちなみに、クロモリのラグ接合は強度的なメリットはないです。
ラグ構造は、ラグレス構造よりも強度が落ちます。
破壊試験をすると、ラグ終りのところ(ヒゲの先など)でメインチューブに応力集中が起きて破壊します。
って、これはアマンダの千葉さんの受け売りなんですけどね。
僕は「重い鉄のフレームに乗れ」っていわれてます(笑)

yama-kei:

こーざいさん、はじめまして。

クロモリのラグ接合って強度は強くないのですね。
振動吸収に効果があるという話を聞いたことがあるので、ガチガチに固めていないことによるメリットを取っているのかもしれません。

千葉さんじゃないですが、走った感触や見た目の観点から言って、自分もクロモリフレームが好みです。マーケティング的な意味合いの強い過度の製品開発が自転車業界を面白くなくしてしまっているような気もします。
まぁ、好きな自転車に楽しく乗るのが一番だと思うので、人の趣味に口を出すつもりはないですが・・・。

ヤビツTT、まだまだ強い人がいるのでもうちょっと頑張ってみようと思っています。

key:

こっそりとクロモリフレームをオーダーしているkeyですw

ラバネロ監督も「カーボンは見栄だから」と言っていて、マーケティング的な要素は否めないのでしょう。実際、実業団で使っているフレームもクロモリがほとんどで、それでも一線級の成績を残していますから、性能的なビハインドは想像するほどでは無いのかも知れません。

クロモリは重量面でビハインドがあるそうなのですが、オーダーが容易なフットワークの軽さ、フィッティングの良さはやはり良いと思います。なにせ、エンジンは人ですからね!

# ラバネロカーボンもありますが、こちらは日本で設計してイタリア制作

私はラバネロのクロモリ、アルミ、カーボンと試乗してみたのですが、バネ感、推進力が最もしっくりきたのはクロモリでした。

yama-kei:

>keyさん

「クロモリフレームのオーダー」よいですね。
自分も次にロードを組むとしたら国内のビルダーにお願いしようかなぁ、なんて考えていたところでした。流行り廃りの激しい最新鋭フレームは10年~20年後に乗ってる姿が想像できませんが、完成されたフォルムのクロモリフレーム(それもオーダー品なら尚更)は30年後にも乗れる感じがします。

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2009年04月01日 08:32に投稿されたエントリーのページです。

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