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立身出世主義 - 竹内洋

経済学・社会学


Title: 立身出世主義―近代日本のロマンと欲望
Author: 竹内 洋
Price: ¥ 1,995
Publisher: 世界思想社
Published Date:

明治維新以来の近代日本の立身出世主義について研究した本。

明治初期は真の意味で高等教育を受けることに意義があった時代だったようだけど、その後には高等教育を受けるという価値感だけが高騰してしまい、結果として自己目的化した受験社会を生み出すに到った・・・というのがこの本の主旨(まとめすぎ)。

この「真に高等教育を受けることに意義があった時代」に、いかに立身出世ということが社会に広まり、若者達を鼓舞し、東京の人口を増やし、苦学生を生み、近代日本を形作ってきたか・・・ということが丁寧に研究されている。

エリートの輩出装置だった旧制高校のバンカラぶりや、高等小学校卒の「インテリ志望」達のクーリングオフ装置となった自習用の講義録の話。さらには苦学生達の苦労と「学校出」の中流階級が創出されていく過程などなど、様々な視点から近代日本の立身出世「幻想」を見つめていて、とても面白く読むことができた。

現代日本においては崩れつつあるにせよ、近代日本が造りあげてきた社会構造の一端を覗くことができる有意義な本。