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一の糸 - 有吉佐和子

小説・詩集


Title: 一の糸 (新潮文庫)
Author: 有吉 佐和子
Price: ¥ 780
Publisher: 新潮社
Published Date:

歌舞伎座で見た「ふるあめりかに・・・」が面白かったので、有吉佐和子さんの小説を読んでみた。

裕福な家庭で何不自由なく育った娘が、文楽の三味線弾きに強く惹かれ、色んな思いや悩みを持ちながらも「芸に生きる男」に人生をかけて尽くしていく姿を描いている。
この娘・茜の視点から物語が語られるのだけれど、なんと言ってもこの話の焦点は文楽という舞台芸術と、その世界の中で生きている人たちの社会に絞られている。

文楽の義太夫節を織り交ぜて、詩情豊かに「文楽」という愛すべき豊かさを持った芸術に魅せられた人たちの姿が描かれていて、とても面白い小説だった。

自分たちの世代には、有吉佐和子さんの名があまり知られていないように思えるのだけれど、物語のオリジナリティーという意味でも、穏やかでいながらも鋭い語り口という意味でも、とても優れた小説家だなぁ、と素直に感じた。