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変わる家族 変わる食卓 - 岩村暢子

その他


Title: 変わる家族 変わる食卓―真実に破壊されるマーケティング常識
Author: 岩村 暢子
Price: ¥ 1,890
Publisher: 勁草書房
Published Date:

1960年以降生まれの主婦を対象とした、家庭の食卓調査を通じて現代の家族の食生活の姿の変移を分析した本。

「朝からカップラーメン」とか、そういったアリエナイ食生活を紹介して読者を驚かして問題提起をする・・・といったありがちな展開に終始するのではなく、あくまでクールな視点から、家庭の食卓という現場を通じて現代の家族の姿や、それを取り巻く社会の変化に厳しい視線を向けていて、興味深く読めた。
まともな食生活を送らなければと思いながらも、ついつい楽な選択をしてしまう自分にとっては、実に耳が痛くなる本でもある。

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問題は、昔ながらの食生活が必ずしも「正しい」わけではない、ということなのだと思う。栄養をある程度考えて献立を考えて、まめに買い物をして、おかずを何品か準備して・・・といった手間は、それが身に付いていなければ実践することは(ほとんど)無理だし、ちょっとやそっとの努力で身に付くものでもない(逆に言うと、こういった基礎体力を身につける、ということには金銭的な価値以上の価値がある)。
核家族化が進んで、家族の人数が3人とか4人とかになって、いくらでも回りに楽をできる手段が転がっていたときに、あくまでもストイックにそういったやり方を維持することを多くの人に求めることはできないのだろう。

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社会のあり方の変化によって、家族の形や食卓の姿が変化を余儀なくされるものである、ということは間違いない。だけど、家族や食卓といったアナログで身体的なものは、そういった大きな変化に対して、見えないところからジワリジワリと変わっていって、いつの間にか全く異なったものになってしまうのだと思う。数値化できたり、目に見えたりするところだけで「よい」と判断してしまうことの危うさは、常に意識しておくべきなのだと感じた。
こういった時に、一番信頼できるのは、身体的で、アナログ的な感性なのだと思う。

食生活で起きている変化から透けて見えてくる「対話のない家族」だったり、「ネタでしかつきあえない人たち」の姿は、自分とは全く無関係ではなく、色んなことを考えさせられる読書体験だった。