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アナーキズム - 浅羽通明

哲学・思想


Title: アナーキズム―名著でたどる日本思想入門 (ちくま新書)
Author: 浅羽 通明
Price: ¥ 945
Publisher: 筑摩書房
Published Date:

日本における、「アナーキズム」を俯瞰した本。
アカデミカル過ぎて退屈な本にならないように、アナーキズムに限らず、思想史というものの面白さが伝わってくるような構成になっていてなかなかナイス。

アナーキズムという思想・活動があったことは、頭では理解していたのだけれど、身近なものとして認識できなかった自分にとっては非常に刺激的な読書体験になった。
結局の所、思想とか宗教ってのは、それが発生して発達したバックグラウンドとセットで取り扱われるべきだし、それがある局面では薬になったり、ある局面では毒になったり・・・といったことをきちんと理解しなければならないのだと思う。

で、「アナーキズム」もまさにその典型的な例。国家とか権力とかいったものが無意味で、人間存在にとって不必要なものだ!・・・という主張は、例えばそういったしがらみ抜きで何かを作り上げる立場にある人(芸術家等)にとっては真だろうし、理想に燃えていながらも、人間の弱さによって堕落し続ける社会の営みに疲れた人にとっても真となるのだろう。けれど、もし本当に国家だとか権力だとかいったものが一切なくなってしまった時に、今ある人間の営みを持続できるのか・・・といったらそれは無理だと思うし、国家や組織がいかに腐敗してしまうものだとしても、今そこにある「あり方」として上手につき合っていくしかないのだとと感じた。

「アナーキズム」という思想・理想を完全に実現しようとすると、個々の人間は果てしなく強固な自我を持つことを求められてしまう。そして、アナーキズム思想の黎明期には、たくさんの(ある意味)無謀な試みがなされていて、非常に興味深かった。

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究極的に「アナーキズム」を実現していた人って誰だろうと考えていて、12世紀のペルシャで若者を麻薬を使って殺人者に仕立て上げ、アラムートの砦を支配し続けたハッサン・サバーを思いついた。