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モンティ・パイソン正伝 - モンティ・パイソン

ノンフィクション


やたらと分厚いパイソン本。
本人達によって語られる、生い立ち、受けた教育、パイソン以前の仕事、そしてパイソン時代からそれ以降の話。

無理やりまとめると、第二次大戦の暗い影を引きづった時代に生まれ、その影と決別する形ですくすくと成長し、コメディーで人を笑わせる才能に長けた6人が集まって、面白いことをやらかすことに成功したのがモンティ・パイソンである、と言えるのだろう。

面白いことに、メンバーの中で一番身近に感じることができたのは、これまでいまひとつキャラクターを掴むことができなかったテリー・ギリアムだった。
5人の個性の強いイギリス人に囲まれて、ある意味便利屋としての仕事に徹して沢山の経験を積んだことで、彼のクリエイターとして才能が磨かれたように思われる。他のパイソン達がモンティ・パイソンをやっていく中で消費されていったように感じられるのに対し、一人テリー・ギリアムだけは沢山のことを学び、それを昇華させることに成功したように感じられるのだ。

また、ジョン・クリーズやエリック・アイドルのようにモンティ・パイソンの「顔」ではなかったものの、実はモンティ・パイソンの心臓部でありグループのメンタリティーを保つ努力をし続けていたテリー・ジョーンズも面白い存在だと思う。

メンバーそれぞれが強烈な個性を持っていて、普段は別のことを考えているのに関わらず、モンティ・パイソンという箱の中に入って考えることで途端に素晴らしいものがポンポンと生まれてくる、という現象は本当に面白い。色々な偶然が重なって波長が合った人間が集まると、こんなにも楽しいことができるのだ。
伝える方法が何であれ、面白くてセンスのある人間はどこか通じ合うことができる、というだけの話なのだけれど・・・。

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"Withnail and I"の製作会社である"Handmade Films"の第一作が"Life of Brian"である、というのは有名な話だけれど、創設者であるジョージ・ハリソンが立ち上げに苦労した話が出てくるのは面白い。
本当は"British Handmade Films"という名前にしようとしていたとか、"Handmade Films"のロゴはテリー・ギリアムが作ったとか、出資者に資金提供を断られて途方にくれていたパイソン達を協力するため、ジョージ・ハリソンが自宅をモルゲージに入れてまで資金を提供してくれたとか、心暖まるエピソードに溢れている。