走るために生まれた

自転車ネタじゃないけど、最近読んだ本の中でダントツに面白かったので紹介。

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“BORN TO RUN”は、「走ること」についての様々な知見が詰まったノンフィクション。

体重100kg+の著者の「なぜ自分の身体は走るようにできていないのか?」という問いかけからこの物語ははじまる。ランニングで距離を伸ばそうとするたびに怪我をしていた著者は、ふとしたきっかけで「走る民族」タラウマラの存在を知る。メキシコの荒野に住むタラウマラ族は、とうもろこしビールと走ることをこよなく愛する部族で、90年代にアメリカのウルトラマラソンのレースに出場し、他を寄せつけない圧倒的なパフォーマンスを見せたのだという・・・。

タラウマラ族と一緒に走り続ける生き方を選んだ謎の人物カバーヨ・ブランコ(白馬)が物語の軸で、彼が企画した50マイルのウルトラマラソンがタラウマラ族達の住む土地で開催される様子が描かれる。それに付随する形で、過保護すぎるランニングシューズが怪我を誘発している(自然な走り方を忘れさせてしまっている!)という説や、ヒトが進化の過程で「長距離ランナーとして完成」し「我々は走るために生まれたのだ!」とするユニークな説が紹介される。

チーターのように速く走ることもできず、クマのような力もないヒトにとって、「長い距離を走りつづけること」はたくさんの世代を通じて獲得した素晴らしい「贈り物(ギフト)」なのだ、と著者は分析する。つまり、この本が伝えようとしているのは、こういうことだ。「ヒトは走るために生まれた」し、「走ることは素晴らしいことである」と。

「走ること」に限らず、ヒトが身体を動かすことに喜びを覚えるのは、「身体を動かすこと」には生存本能に訴えかける何かが含まれているから(結果、快感神経に作用する)だと個人的には思っているのだけど、この本で描かれている「走る理由」もまさにそれと同じラインで説明されていて、楽しく読むことができた。

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義兄に「おもしろいよー」とすすめられて英語版を途中まで読んでいたのだけど、めんどかったので途中からは日本語版で読んだ。著者独特のオーバーな表現や、冗長的になりすぎているところまでが素直に訳されているので、ひょっとするとウザく感じるひともいるかも。

走ることに興味のある人、身体を動かすのが好きな人、ノンフィクションが好きな人、などにおすすめ。

走るために生まれた」への2件のフィードバック

  1. お!めずらしく翻訳されてる本の紹介ですね(笑
    やまけいさんでも英語だと読むのがめんどくさくなるというのは新情報ですね。ふむふむ、なるほど。
    自分は自転車に出会うまで10年近く運動をしていなかったので「体を動かすことは素晴らしい!」
    と最近つくづく思います。なによりも運動後のメシとビールがたまりません(笑
    時間見つけて読んでみようと思います?。

  2. > KOHさん
    英語本の紹介が多いのは、自転車関係でマニアックな文献を漁ろうとすると翻訳版がないからなのでした。パワーメーターを使ったトレーニング本なんて、ニッチすぎて絶対日本語訳されないでしょうし・・・。
    自分の場合、「身体を動かすのは素晴らしい」というよりも「身体を動かしてないと気持ち悪くなる」タイプなので、怪我したり病気で運動できないのが一番辛いです。食い物がうまいのはほんとその通りっすね。

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