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2008年02月03日

エンピツは魔法の杖 - サム スウォープ


Title: エンピツは魔法の杖―物語・詩・手紙…ニューヨークの子どもたちに「書くこと」を教えた作家の奇跡のような3年間
Author: サム スウォープ
Price: ¥ 1,680
Publisher: あすなろ書房
Published Date:

素晴らしい本。
童話作家の著者が、ニューヨークのブルックリンの公立学校で小学生の子供達に「書くこと」を教えた3年間の記録。

様々なバックグラウンドを持つ子供達を相手に、ただただ懸命に「書くこと」「表現すること」の素晴らしさを伝えようとするスウォープ先生の姿が実に印象的。
「書くこと」や「教える」といったことについて色々と考えさせてくれると同時に、子供達の感受性の鋭さにも驚かされてしまう。多くの大人は、言葉というツールを中途半端な形でマスターして、分かり合えているような気分になっているのではないかなぁ、という気がしてしまう。下手に便利な言葉を知らない子供達の方が、よっぽど素直に世界を見ているし、ありのままに世界を描くことができるのだと思う。

子供達の目を通じて描かれる世界は、時に残酷で絶望的で恐ろしいものだったりする。そういったことから目を逸らさず、子供達と一緒になって悩み、考え、言葉を紡ごうとしたスウォープ先生の努力が詰まった本だと感じた。

2008年01月10日

童話の書き方 - 寺村輝夫


Title: 童話の書き方 (講談社現代新書 (661))
Author: 寺村 輝夫
Price: ¥ 663
Publisher: 講談社
Published Date:

題名どおり、大人が童話を書くときに陥りがちな罠を回避しながら「面白い」童話を書く方法を教えてくれる本。

安易に「童話」をチャイルディッシュな物語として書き上げることに対して、著者は口をすっぱくして非を唱える。逆に言うと、いくら言っても「童話」というものをそういった形でしか書き上げることができない人が多いということなのだろう。

どんな物語を書くにも発想力と構成力が必要になるけれど、シンプルな言葉で簡潔に物語をまとめることが要求される童話では、発想された世界観や出来事や人物描写をいかにしてストレートに伝えられるか、というポイントが重要になるのではないかと思った。

2005年08月07日

いつもいつも音楽があった - 子安ふみ


シュタイナー学校での音楽を使った教育が書かれた本。
シュタイナーに関してはそんなに詳しくなかったのだけれど、教育一般には興味があるので読んでみた。

著者は日本に帰国していた1年前後の期間を除いて小学校から高校までほぼ全ての学年をドイツのシュタイナー・スクールで過ごしていて、その貴重な体験の中に沢山の面白い発見があった。

多様な価値観を持つことを教えられ、またどんな時にも楽観的な姿勢で生きていく・・・。
言うのは簡単だけど、実践するのは難しい。
シュタイナー学校ではこういった人間が多く輩出される土壌であることがなんとなく理解できた。

2005年05月07日

素顔の白雪姫 - 小澤俊夫


グリム童話の研究者によるグリム童話の成り立ちと、その変移に関する解説。
著者は小沢健二のパパ。

アカデミックな香りがしつつも比較的親しみやすいグリム童話が題材である上に、ユング的解釈をすると~~とか大風呂敷を広げないのでとても素直にグリム兄弟が歩んだ道をたどることが出来る。

なんといってもいばら姫と白雪姫の版ごと比較が面白い。
人々の間で語り伝えられてきた「民話」から読み物としての普遍性が強まった「童話」へと変わっていく姿が目の前で展開されるのはとてもドラマチック。

アカデミックの匂いが強いので飽きやすい人には辛いとは思うのだけれど、グリム童話に興味があるのであればとても面白く読めると思った。

2005年03月08日

愛に生きる - 鈴木鎮一


これはいい本!

教育者として一生懸命にやっている著者の心の声がとても印象的な文章として広がっている。

「才能は生まれつきではない」
この言葉は教育者ではない僕にとっても、とても心強い、そして言い訳を許してくれない強い力だ。

人と人の繋がりとして、音楽が愛を運ぶメディアとして機能しているみたいな意見にも共感できた。
意味のないようなものにこそ意味がある。
行動はいつだって起こせるようにしたいものだ。

2005年01月08日

ブータンの民話 - クスムクマリカプール


ブータンの民話が集められた本。
どの話も非常に素朴で分かりやすく、文字も大きいので読みやすい。

とても自然なかたちで人間の世界が動物や植物の世界と繋がっていて、なかなかいい味を出している。
せっせと真面目に働いて・・・という教訓めいたものよりも、偶然に助けられて幸せを掴む話が多いのも特徴かも知れない。

「王様の耳はロバの耳」の話があって、途中まではほとんど一緒だったのがとても興味深かった。
イソップ寓話に出てくるのは床屋だけれど、この話の中では「お気に入りの従者」になってる。

どこかの村の僧侶がチベットのガンデン村の試験で・・・なんて話があるのがまたナイス。