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2007年08月04日

リチャード三世 - シェイクスピア


Title: リチャード三世 (新潮文庫)
Author: ウィリアム シェイクスピア
Price: ¥ 420
Publisher: 新潮社
Published Date:

シェイクスピアの初期作品。
冷酷で明晰な頭脳を持つ英国王リチャード三世が容赦なく政敵を粛清して自らを王の座に据えた後、たった2年間の短い時間を経て反乱軍との戦闘中に殺されるまでが描かれている。

相変わらず、テンポもリズムも素晴らしいシェイクスピア劇。
「そばを通れば犬も吠え掛かる」という醜いリチャード三世が物語の中心軸として登場し、沢山の人たちを死に追いやった後、全てをコントロールしていたかに見えた彼自身もより大きな運命の奴隷として戦場で殺される。

2007年03月21日

マクベス - シェイクスピア


福田恒存さんの翻訳。
現代的な文章で、そのまま日本語での上演に使えそうな翻訳だ。個人的には市河三喜さん・松浦嘉一さんのハムレットのような格調高い文章や、中野好夫さんのヴェニスの商人のような少しくだけた文章に慣れていたので、いかにもプレインな感触のこの文章には少なからず違和感を感じた。

マクベスは、ある程度まで予定調和の悲劇であるように思う。
魔女達が「人の弱さ」につけこんで、世界の秩序を乱している・・・みたいな世界観があると同時に、それを頑張って正していこう・・・という力が働いて世界の均衡が保たれる。

なんといっても、一番印象的なのはマクベス夫人のキャラだろう。
「王を殺すなんてとんでもない」と後込みするマクベスに葉っぱをかけ、王を自分に手をかけることも厭わない。マクベスが王になった後は、自分の好きなように政治を仕切る・・・というのはよくある悪役女性のパターンだけれど、その彼女さえも最後はあっけなく闘いが始まる前に事切れる。
あくまで、物語の主眼は人間の弱さに置かれていて、そこを軸にして物語が回るからスケールの大きさが強調されるのだろう。

マクベスを読んで、先日見た劇団新感線の「朧の森に棲む鬼」がいかに強い影響を受けていたかがよく分かった。

2007年02月23日

悪への招待状 - 小林恭二


歌舞伎入門としてオススメできるよい本。
二人のイマドキ風な若者を幕末の江戸に連れて行き、当時の風俗や文化を詳細に説明しながら芝居を楽しむ・・・という筋。

紹介している芝居が「三人吉三巴白波」、というのがポイント高い。
黙阿弥による作品の中でも特に台詞が洗練されていて、幕末の退廃的な雰囲気の中にキラリと光る美しい人情が表現されている。

料理や宗教、芝居の作者や俳優に関しても実に詳しく調べてあって、著者のマメな人柄に感心させられた。

2006年08月26日

戯場戯語 - 板東三津五郎


主に歌舞伎に関係する人や物に焦点を当てた八代目板東三津五郎さんによる随筆集。

タイトル通り軽めで読みやすいものが多いけれど、さらっと書いた文章の中に著者の生きてきた役者人生がギュッと濃密に詰められているような気がしてとても読み応えがある。

「役者とは親の死に目にも、妻の死に目にも会えないものだ」という悲しい現実。底抜けに楽しい中に張りつめた緊張感を感じさせる舞台。そして昔気質の人たち・・・。
戦前・戦中・戦後にかけて大きく日本が変わってきた中で、変わらないように変わらないようにしてきた歌舞伎という文化を背負ってきた人による、とても味わい深い本だ。

2006年07月15日

歌舞伎への招待 - 戸板康二


非常に優れた歌舞伎の入門書。
いわゆる入門書、というよりは歌舞伎のエッセンスを非常にコンパクトにまとめあげた本である。

この本は著者がエトランゼの視点から歌舞伎を眺め、その魅力を余すことなく伝えることに成功した非常に素晴らしい作品だと思う。

2006年04月29日

千本桜 - 渡辺保


義経千本桜の薄っぺらい解説本に含まれていた「歌舞伎をみるために」みたいな文章にとても説得力があったので、古本屋で見つけて面白そうだった本書を図書館で借りて読んでみた。

義経伝説、狐、鮨、桜、天皇・・・と千本桜を構成するいくつかの要素を念入りな取材・研究を元に詳述していく・・・というのが著者のスタイル。読んでいてちょっとクドいかな、という気もするけれど、最終的に彼が提示している意見はとても説得力があるし、芝居を考える上で斬新な視点を提供してくれるように感じる。

この本を読んでいて一番面白いと思ったのは、原作を執筆した浄瑠璃作者達がいかに多くの要素を物語りに盛り込んでいたか、ということ。
浄瑠璃でも歌舞伎でも上演されるたびに少しずつその形が変わっていくわけだけれど、物語の中に含まれるエッセンスは変わらずに保たれ続けて、どこかで物語の輪郭を形作っているように感じられた。

2006年02月25日

芸十夜 - 板東三津五郎・武智鉄二


どこだったか、歌舞伎に関してかなり切れ味鋭い評価を載せているウェブサイトで紹介されていたので入手した本。

某・歌舞伎の大先生に「小学生が大学院生の本を読むようなもの」という言葉をいただくほどに中身の濃い本なのだけど、基本的には対談録なのでよく分からなくても読み進められるのが幸い。
日本の伝統芸に体当たりしてきた人たちなので、そこかしこに芸術の本質を語った言葉が散りばめられていている。

対談を通して語られていることの7%も理解できるか分からないのだけれど、少なくとも日本人の芸術がどういったものであるかがほんのすこしだけ分かったような気がした。
陳腐でありきたり表現かも知れないけれど、「芸なんてよくわからないから、とにかく体当たりしてそれを何年もかけて、何回も代を重ねていくことによって洗練されていく」のが日本の芸なのだな、と思った。

とにかくアナログな知恵の宝庫のようなものが「芸」なのだな、というのがこの本を読んでの僕の感想だ。

2005年08月10日

リア王 - ウィリアム・シェイクスピア


相変わらず面白いシェイクスピア。

薄幸なコーディリアと、甘言に惑わされて悲劇の中心人物となってしまったリア王。
エドガーとエドマンド、それから2人の姉、そしてグロスターとケントというもはや単純に脇役と言うことができないほどに存在感を示すキャラクターもとても印象深い。

シェイクスピアの何が凄いか、といえば、やはり人物描写の素晴らしさとその人々が発する活き活きとした言葉だろう。
全てを失って狂乱のさなかに荒野の風に向かって叫ぶリアの姿には誰しもが心を動かされるだろうし、追放を言い渡されても主君に忠実に仕えようとするケントには感動すら覚える。
そして愚かで欲情に燃えた2人の姉の姿もとてもうまく描かれている。

岩波文庫版を読んだのだけれど、注解としてなかなか詳細にわたった説明がつけられていて、当時の風俗習慣がわかりやすくなっていたのが好印象だった。

**

シェイクスピアが悲劇を書いた理由がなんとなく自分の中で掴めてきた気がしている。それは「人生の最大の悲しみ」の表現であり、「絶望」のシミュレーションのようなものなのではないか、と感じた。

2005年02月10日

Journey's End - R.C. Sherriff


Title: Journey's End (York Notes)
Author: R. C. Sherriff
Price: ¥ 891
Publisher: Prentice Hall (UK)
Published Date:

サンフランシスコ行きの飛行機から読み始めて、3日後の帰りの飛行機で読み終えた。

映画"Withnail and I"の中で、登場人物のマーウッドが読んでいる本、ということで読んでみたのだけれど、なんともイギリス的でとてもよくできたお話。

第一次大戦中の西部戦線の塹壕が舞台。
学校を卒業して軍隊に入り、前線へとやってきた若者、ラリーは、自分が配属された部隊長が尊敬する学校の先輩であり、また家族ぐるみのつきあいでもあるスタンホープであることを知って喜ぶ。
一方スタンホープは、3年前に軍隊に入って以来、素晴らしいリーダーシップを発揮すると同時にアルコールに蝕まれた生活をしていた・・・・。

とても苦々しい体験が綴られているのだけれど、その中でもイギリス的な精神を失わずにいる兵士達の心情が描かれている。
「自由と規律」の中に出てくる、家庭教師とその教え子の話(元ネタは忘れてしまった)ととても似ている。
やはり第一次大戦の記憶はイギリスにとてもとても大きな影響を与えたのだな、と今更ながら感じた。

2004年09月19日

ヴェニスの商人 - シェイクスピア


大傑作!!

う〜〜〜ん、なんでこんな素晴らしい本をこれまでずぅ〜〜っと見逃してこれたんだろう・・・。
これもひとえに「シェイクスピア=難しい」の公式が頭に定着していたせいですね。
常識って恐ろしい。

物語としてのツボをしっかりついていて、それをうまく広げるエピソードがたくさん散りばめられている。

ハムレットを読み終えたらこれも英語版にチャレンジしたい。

2004年09月17日

十二夜 - シェイクスピア


面白い!

シェイクスピアって難しそう〜〜〜と思ってる人に特によさそう。
ハムレットみたいにジメジメしたところがなくてひたすらカラッとした展開で話が進む。

思わず読みふけってしまいました・・・。
恐るべし、シェイクスピア。

2004年07月09日

Withnail and I - Bruce Robinson


Title: Withnail and I (Bloomsbury Film Classics)
Author: Bruce Robinson
Price: ¥ 1,201
Publisher: Bloomsbury Publishing PLC
Published Date:

amazon.com/co.uk あたりから手に入れるしかないか・・・と思ってたらco.jpのマーケットプレイスで発見したので購入。
気付いたら読み終えていた。

映画「Withnail and I」の脚本なのだけど、監督自らが書いているので、映画で理解し切れていない部分が分かるのは嬉しい。
何よりも、監督ブルース・ロビンソンが本当に気持ちを込めてこの作品に対してコミットメントしている姿勢がとてもよく分かる。

やっぱり自分の人生の体験で一番濃かったことを映像化するのだから、面白い作品ができるにきまってる。