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兵士に聞け - 杉山隆男

ノンフィクション


Title: 兵士に聞け (小学館文庫 (す7-1))
Author: 杉山 隆男
Price: ¥ 830
Publisher: 小学館
Published Date:

「自衛隊」という、なんともいえない微妙なポジションに立たされている組織を構成する人たちの等身大の姿を追った大部のノンフィクション。

日本における自衛隊の存在の「微妙さ」は、第二次大戦の悲劇からの反動による理想主義的な憲法9条と、その後の世界情勢や政治的パワーバランスによるものであると認識しているのだけど、実際に中の人たちは色々と大変らしい。

自衛隊が発足して間もない頃に、防衛大学校の卒業生に向かって時の首相吉田茂が語った言葉「自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは外国から攻撃されて国家存亡のときとか、災害派遣のときとか、国民が困窮し国家が混乱に直面しているときだけなのだ。言葉をかえれば、君たちが<日陰者>であるときの方が、国民や日本は幸せなのだ。耐えてもらいたい。」

という言葉が全てを語っているように思う。

昇進にも昇給にも結びつかない過酷なレンジャー訓練を受ける幹部候補生達や、最新鋭の護衛鑑を限られた人数で動かしている人たち、大地震に見舞われた僻地の島のレーダーサイトで日々国籍不明機の影を追いかけている防人達や、カンボジアのPKOで本物の戦地を体験した兵士達・・・。

たくさんの人々の「生の声」が収められているので、ものすご~く読み応えがある面白い本だった。