« 神仏のまねき - 梅原猛 市川亀治郎 | メイン | 無一文の億万長者 - コナー・オクレリー »

反貧困 - 湯浅誠

経済学・社会学


Title: 反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)
Author: 湯浅 誠
Price: ¥ 777
Publisher: 岩波書店
Published Date:

今そこにある日本の貧困に「NO」を唱える本。
バブルが弾けて国家としての勢いも失いつつある中においてもなお一億総中流の幻想から醒めない日本で、経済的・社会的に行き詰った人たちがどんな扱いを受けているか、そしてそういった人たちを救済しつつ、豊かな社会を作っていくためにはどんな活動が必要とされているのか、ということが書かれている。

「格差社会」だとか「下流」とかいった言葉は既に違和感なくメディアを流通する言葉になっているけれど、国内における「貧困」という言葉はまだまだメディアに登場する機会が少ない。この本の著者が日々向き合っている「貧困」は、日本国憲法によって保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」が脅かされている人たちの「待ったなし」の「貧困」。

例えば、「ネットカフェ難民」という言葉がメディアに登場するやいなや「分かりやすい貧困」として政府の重い腰を動かす結果になったわけだけれど、「ネットカフェ難民」という現象の裏にある根本的な問題に対して政府が何らかの措置を取っているようには思えない。

今の日本に必要とされているのは、経済発展を前提とした弱者を切り捨てることを厭わない戦線拡大ではなく、経済活動が縮小していく中でも国民の「最低限の生活」が守られるようにするための知恵であり、制度であり、痛みを共感する心なのではないかと感じた。