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2008年09月30日

モンタナ・ジョー - 村上早人


Title: モンタナ・ジョー―マフィアのドンになった日本人
Author: 村上 早人
Price: ¥ 1,680
Publisher: 小学館
Published Date:

イタリア人同士の血縁によって繋がっているマフィアの世界で、「ドン」と呼ばれる存在までのしあがった日系人の物語。
最近読んだ本「ザ・エージェント」の鬼塚さんが手がけた本だということで試しに読んでみたのだけど、なかなか面白かった。ちょっと文体がもっさりしているのと、「ノンフィクションを面白く&上手にまとめようとしてます」臭がしてしまうけれど、あくまで許容範囲内。

マフィア同士の血を血で洗う抗争の話はまさにゴッド・ファーザーの世界だし、第二次大戦前後にアメリカに出稼ぎに来ていた日本人達が舐めた辛酸、そしてジャズがどういう環境で育まれてきたのかといったことに関する言及などなど、非常に興味深い読書だった。

ギフト - ル=グウィン


Title: ギフト (西のはての年代記 (1))
Author: アーシュラ・K. ル=グウィン, Ursula K. Le Guin
Price: ¥ 1,680
Publisher: 河出書房新社
Published Date:

「ゲド戦記」の作者、ル=グウィンさんの最新作「西のはての年代記」シリーズの一作目。
「ギフト」というテーマの扱いがとても興味深くて、主人公が少年から青年へと成長していく姿を描いた魅力的な物語に仕上がっている。

「ギフト」とは、物語の中に出てくる主人公達が住む「西の果ての“高地”」に住む一族に伝わっている力のことで、家系によって様々な能力を発揮する。日本語で「ギフト」と聞くと単純に「贈与品」(プレゼント)のようなものを想像しがちだけど、英語のギフトはより「天より授かった」的な意味合いが強い。

「ギフトの力を行使したものは、その代わりに形としてのギフトを贈らねばならない」とか、いかにもル=グウィンさんらしい、文化人類学的なモチーフが素敵。
思ってたよりあっさり図書館で借りられたので、早速次のやつに手を伸ばしてみようと思う。

2008年09月24日

一眼レフ戦争とOMの挑戦 - 米谷美久


Title: 一眼レフ戦争とOMの挑戦―オリンパスカメラ開発物語 (クラシックカメラ選書)
Author: 米谷 美久
Price: ¥ 1,890
Publisher: 朝日ソノラマ
Published Date:

オリンパスが1970年代に売り出して好評を博した小型一眼レフである、OMシリーズの設計者・米谷さんによる本。

「重い・大きい・うるさい」と言われた一眼レフカメラに革命を起こそうと決心し、彼がOMシリーズを世に問うたその心意気&野望。そして新しいものを作り上げることにチャレンジしていった際の苦労がよくまとまっている。

カメラ史の中における一眼レフカメラの立ち位置だとか、日本のカメラメーカーによって次々と成し遂げられたブレイクスルーの数々が取り上げられているので、カメラに興味のある人なら楽しく読むことができる本だと思う。

長らくカメラの王座に座り続けてきた一眼レフの立場が、デジタル技術の進化によって少しずつ危うくなってきている今だからこそ、こういった本は強い意味を持つのだと思う。
ひとつの考え方にとらわれ過ぎず、迷ったときは原点に立ち返って価値判断を行うという、ごくごく当たり前のことがいかに大切であるかを再認識した。

ひとりのエンジニアとして、米谷さんのような意識を持って仕事をし続けた人がいることは、大きな慰みであり誇りであるように感じられた。

2008年09月23日

楢山節考 - 深沢七郎


Title: 楢山節考 (新潮文庫)
Author: 深沢 七郎
Price: ¥ 380
Publisher: 新潮社
Published Date:

今村昌平さんの映画が面白かったので、原作を読んでみた。

思っていたよりも短い小説だなぁと思ったのと同時に、映画化にあたって原作の雰囲気がよく残っている印象を受けた。あっさりとした文体なのに、登場人物達の心の動きやジワリジワリと伝わってくるのがなんとも不思議。

村人が歌う歌が物語によくマッチしていているのが印象的。

2008年09月19日

サクリファイス - 近藤史恵


Title: サクリファイス
Author: 近藤 史恵
Price: ¥ 1,575
Publisher: 新潮社
Published Date:

ロードレースを題材にした小説。
「期待してたほどは面白くなかった」というのが正直な感想。

文体はぎこちなくて硬いし、ロードレースの描写もどこか不自然。サスペンス仕立ての物語の筋も「何だかなぁ」という感じ。
題材がロードレースなだけに自転車好きならついつい読んじゃうのだろうけど、小説としての魅力は感じられなかった。

2008年09月18日

ザ・エージェント - 鬼塚忠


Title: ザ・エージェント
Author: 鬼塚 忠
Price: ¥ 1,575
Publisher: ランダムハウス講談社
Published Date:

日本では知られていない「作者のエージェント」の会社を立ち上げた著者による本。

作者のエージェントという仕事は初めて知ったのだけど、非常にやりがいがあると同時に大変そうな仕事だなぁと思った。行動力と発想力、それに社交術に長けていないと勤まらない仕事な気がする。

2008年09月15日

古事記 - 梅原猛


Title: 古事記 (学研M文庫)
Author: 梅原 猛
Price: ¥ 546
Publisher: 学習研究社
Published Date:

いや~、面白い。
古事記とか日本書紀とか万葉集とか、読もうと思い続けながら読む機会に巡り会えてなかった(=本気で読むぜと思ってなかった)のだけど、やっぱり読んでみると面白いもんです。

一言で言ってしまえば、日本人にとっての創世記のようなお話。民族の古い伝承や歌が詰まっていて、話がどこか大がかりで、謎に満ちていて、ちょっとグロテスクだったりエロかったりして、なんとも言えない魅力に溢れている。

オリジナルは古い言葉で書かれていて解読が難しそうなので、今回は梅原猛さんの本を読もうと思い立った勢いで彼の手による翻訳を読んだ。
色んな解釈がなされているようなので、これ以外のバージョンにも手を出してみるのも面白いかもしれない。

2008年09月11日

梅原猛の授業:仏教 - 梅原猛


Title: 梅原猛の授業 仏教 (朝日文庫)
Author: 梅原 猛
Price: ¥ 630
Publisher: 朝日新聞社
Published Date:

ベリーナイスな仏教本。

日本の仏教の変移とかノリを大ざっぱに掴むのには最適な本だと思う。梅原さんの宗教に関する考え方や、宮沢賢治の素敵っぷりも紹介されているのもナイス。