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海賊版の思想 - 山田奨治

法律・政治


Title: 〈海賊版〉の思想‐18世紀英国の永久コピーライト闘争
Author: 山田 奨治
Price: ¥ 2,940
Publisher: みすず書房
Published Date:

18世紀の英国の書店主達の間で闘われた、コピーライトに関する裁判に焦点を当てた本。
山田奨治さんというと、「日本文化の模倣と創造」がとても面白くって、この本も期待して読んだのだけれど、期待に違わず面白い本だった。

印刷技術の発展によって出版業が興り、そこから「大衆向け」の本を書く著者が現れるようになった。そして、その「金のなる木」の権利を独占するべく、書店主(当時における「書店」とは、編集者であり、出版社であり、文字通りの書店でもあった)達が結束し、「コピーライト」という権利を明文化された。

そこに様々な政治的思惑や、商売上の損得勘定、さらには地政学的な要素が複雑に絡み合い、グダグダな展開になりながらも、「永久コピーライトが否定される」という*まっとうな*判定が下されたのがこの本で扱われている「ドナルドソン対ベケット事件」と呼ばれる有名な裁判。

現代において「著作権」と呼ばれているものは、それが明文化された当時から商売上の利益確保のため「だけ」に援用されてきたし、その後も既得権利者達の様々な思惑が主軸になって、変更が加えられたりしてきたのだなぁ、と思った。

また、当時の英国における、スコットランド人達の苦悩や努力は並々ならぬものがあったのだなぁ、とか、いろんなことを考えさせられた。