神々の沈黙 - ジュリアン ジェインズ
哲学・思想
Title: 神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡
Author: ジュリアン ジェインズ
Price: ¥ 3,360
Publisher: 紀伊國屋書店
Published Date:
スケールの大きな「人間の意識の歴史」。
非常に興味深くてインスパイアリングな本。
人が自分の意識に対して意識的になるようになったのは、ここ3000年くらいのトレンドであって、その前の人類は「二分心」と呼ばれる心の構造を持っていたのではないか?・・・というのが著者がこの本でぶち上げている仮説。
この「二分心」とは、右脳の中に棲んでいる神々の声(自己の中の他者・幻聴)に従って物事を解釈している様式を指す。現代の統合失調症患者が聞いたり見たりするという、神々の声と似たようなものらしい。
生物学・考古学・歴史学・人類学・宗教学といったフィールドの知識と思考をフル回転させて、この仮説をベースに人類が残してきた足跡についてたくさんの面白い考察を行っている。
本の冒頭で書かれているように、確かに「意識」というものを冷静に見つめ直して見ると、日常生活の中で「意識的」になっている瞬間は思っているよりも少ない。息をしたり、歩いたり、料理をしたり・・・といった行動は、思っているほど「意識的」な活動ではない。
この「意識」というものが誕生した過程では、「言葉」の存在を抜きにすることはできない、と著者は言う。言葉とは、比喩と連想のリンクによって形作られるひとつの宇宙で、比喩の繋がりこそが意識を生み出したのだ。
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・・とまぁ、非常に面白い仮説なのだけれど、これが全面的に肯定されることはないのかなぁ、とは思う。
それでも、この仮説で説明される人類の心の構造の変化と、それに伴う社会構造や文化様式の変化との繋がりは、非常に魅力的だし興味深いものだなぁ、と感じた。