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恐るべき旅路 ―火星探査機「のぞみ」のたどった12年 - 松浦晋也

サイエンス・テクノロジー


Title: 恐るべき旅路 ―火星探査機「のぞみ」のたどった12年―
Author: 松浦 晋也
Price: ¥ 1,400
Publisher: 朝日ソノラマ
Published Date:

題名の通り、日本初の惑星探査機「のぞみ」の、計画立案から設計、製造、打ち上げ、そして実際に宇宙空間を飛行していく中で発生する問題を解決していく様子に迫ったドキュメンタリー。
会社の先輩(いつも渋い本を読んでいるので参考にさせてもらってます)のブログで紹介されていたので、図書館で借りて読んでみた。

プロジェクトマネージメントという意味でも、日本の宇宙開発事業が孕んでいる問題点についての言及という意味でも、非常に示唆的で優れた本だと思う。

まず、「宇宙」ってのは実にイマジネーションをくすぐる空間なのだなぁ、ということを強く感じた。漠然と「宇宙はスゲェなぁ」なんて考えるわけだけれど、地球という自分たちが暮らしている空間から遠く離れて、自分たちのルールが通じない世界のことを考える、ということは、人間の創造力を強く刺激するように思う。そして、その「何が起きるか分からない空間」で、学問の力と工学の知恵とを結集して何かを成し遂げる、というプロセスは実に素晴らしいチャレンジなのだ。

「のぞみ」の失敗が明らかになり、火星の衛星軌道に載せることを諦める方策が採られようとしている中で、しぶとく軌道計算を続けて未来に可能性を繋ごうとしている姿に目頭が熱くなった。

エンジニアにとって失敗は付き物だし、「意義ある」失敗を積み重ねられる環境こそが優れた環境なのだと感じた。