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十六世紀文化革命 1 - 山本義隆

歴史・考古学


Title: 一六世紀文化革命 1
Author: 山本 義隆
Price: ¥ 3,360
Publisher: みすず書房
Published Date:

17世紀に花開き、人類の新しい局面を切り開いたヨーロッパの科学・文化革命に先立ち、じっくりと地中から養分を吸って貯め込み、次の時代への先鞭となった16世紀の有名・無名な人々に焦点を当てた本。

ラテン語を用い、神学、哲学、医学しか教えず、「使えない」知識の掃き溜めとなっていた中世の大学にとって変わり、発達し始めていた都市の中で育まれた職人や芸術家、それに技師や商人達による「使える」知識が「共有」されるようになったのが16世紀という時代らしい。
印刷技術の発達により、それまでギルドや一族の間だけに閉じられていた知識が流出した、という側面もあるようだ。

当時では、ラテン語以外の「俗語」でアカデミズムの領域である本の出版を行うことは「恥ずべき」ことであり、またその集団にとっての既得権利である「知識」を外部に漏らすこともまた「禁じられたこと」だったのだろう。

それでも、この本で示されているような変化が起きたのはどういうことかと言えば、例えば「黒死病(ペスト)の大流行」といったような災害が起きたときに「救い」となったのが大学で勉強したような「医師」ではなくて、低い身分の人間として蔑まれていた「外科医」だとか「理髪外科医」(よく知られていることだけれど、当時において理髪師とは民衆にとっての万能医だった)であったという現実だったのだろうと思う。

固着化して前に進むことができなくなっていた当時のヨーロッパ文明において、沢山の刺激と偶然、それに技術的革新によって文化や芸術、それに技術や学問の世界に地盤変動が起きていった姿を克明に捉えた非常に示唆的な本。