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漫画映画の志―「やぶにらみの暴君」と「王と鳥」 - 高畑勲

文化・芸術


Title: 漫画映画(アニメーション)の志―『やぶにらみの暴君』と『王と鳥』
Author: 高畑 勲
Price: ¥ 2,625
Publisher: 岩波書店
Published Date:

日本のアニメーター達に多大な影響を与えた、ポール・グリモー監督によるアニメーション映画「やぶにらみの暴君」とその改題である「王と鳥」 の解説。

作品が辿った数奇な運命や、監督のグリモーと脚本のプレビュールの人となり、そして何よりも作品自体に関する細部にまで渡る考察が収められた貴重な本だ。

この作品が高畑勲さんや宮崎駿さん、ひいては日本のアニメーション界に与えた影響は計り知れないし、いわゆるディズニー的なアニメーション映画に対してフランスのクリエイターが魅せてくれた作品としても、さらには当時まだ「子供向け」と考えられていた「アニメーション」を見事なまでに大人向けの円熟した作品として昇華させ、世にアニメーション作品の可能性を問いかけたという意味でも非常に価値が高い。

脚本を担当した脚本家・詩人ジャック・プレビュールは、映画史上に残る名作「天井桟敷の人々」(この作品について書き始めるとキリがないので、ありきたりな紹介だけにとどめておこう)の脚本家としても知られている。「王と鳥」の脚本に関しても、アンデルセンの童話をベースに、21世紀となった今でも通用する現代性を兼ね備えた、一筋縄ではいかない物語を紡ぎ上げた。

勧善懲悪ではなく、あくまで地に足の着いた物語でありながら、さりげないタイミングで現れる素晴らしいアニメーション表現や歌、それに活き活きとした登場人物達が魅せる表情豊かな動作。ひとつの映像作品として、非常に充実しているのだ。