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日本海繁盛記 - 高田宏

歴史・考古学


Title: 日本海繁盛記 (岩波新書)
Author: 高田 宏
Price: ¥ 561
Publisher: 岩波書店
Published Date:

江戸時代から明治時代にかけて、大阪から瀬戸内海、そして日本海の荒海を駆け回った「北前船」に関するエッセイ集。
昔気質の船乗り達の自由奔放な精神が伝わってくる、優れた本だ。

「北前船」とは、それぞれの船が独自の資金で商売をやる船で、その多くが石川県の日本海よりの地域に本拠地を構えていた。春前に故郷を出て大阪に行って商材を積み、瀬戸内海、下関を抜けて日本海側から北海道に行き、また帰ってくる。
陸上交通や大規模な運送ビジネスが存在しなかった時代で、遠く離れた北海道からの物産(当時は主にニシンの〆粕)は船主に莫大な富をもたらし、才覚に満ちた優秀な船頭もまた多くの富を得ることができたのだそうだ。

この本を読んでいて、東インド会社があったころに、インドの名産(紅茶など)をイギリスに少しでも早く届けることを目的としていた商船のことを思った。恐らく、子どもの頃に読んだ「ニワトリ号一番のり」という本のことを思い出したのだろう。
積載量の大きい船で、天候などの予測不能な自体と闘いながら逞しくも己の才覚で商売を行っていた人たちの物語、という意味ではどこか似たような精神性が必要とされていたのかもしれない。
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