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デイヴィッド・コパフィールド - チャールズ ディケンズ (石塚 裕子(訳))

小説・詩集


有名な本だし、一回は読んでおこうと思って読んだら、期待通り面白かった。

生まれる前に父に死なれ、母が再婚した相手にイビられながら苦労して育ったデイヴィッド少年の成長が描かれた本。19世紀のロンドンの描写は、例によってディケンズ的に暗くてジメジメしているのだが、登場人物が実に生き生きとしていて物語のよいスパイスになっている。

恵まれない環境からデイヴィッド少年が次々と成功を掴んでいく過程は、どこかスマイルズの「西国立志編」を思わせる。速記記者から小説家、という職業の変移は極めて近代的な空気感じさせるし、実際にディケンズという作家は時代の雰囲気を先駆けて書く能力を持っていたのかも知れない。

村上春樹の小説は、コパフィールド的一人称の語り口にどこか似ていると思ったのだけれど、よくよく考えたらこの手法は他の沢山の小説にも見られるし、それだけディケンズが与えた影響は大きなものだったのだろう。