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英語のたくらみ、フランス語のたわむれ - 斎藤 兆史, 野崎 歓

言語学


東大で英語とフランス語を教えている二人による対談。
それぞれが言語・文学・文化に興味を持ってから今に至るまでの経緯や、出会ってきた文学や人々に対する意見を交わし合いながら、言語学、翻訳、文学について自由なやりとりを楽しんでいる。

ますます実用英語一辺倒になっていく日本の外国語教育事情を憂いつつ、これまでの教養主義のアイデンティティーをきちんと見直す試みが対談のなかでなされているように思う。
実際、きちんとした文法を勉強することなく言語をあるレベル以上マスターすることは不可能だし、明治以来、戦後しばらくの間まで存在していた教養主義の空気の中では、物凄い努力によって複数の言語をマスターしてきた猛者がいるように思う。そして、そんな彼らでさえも到達できない領域がある、というのは嫌でも直視しなければいけない現実でもある。

翻訳論は少し曖昧な感じ。少し一般論でお茶を濁しているように思える。文学論になると俄然熱くなってきて、いかにフランス人が変態であるかがよくわかる対談になっていて面白い。イギリスとフランスという国は、海をちょっとまたいでいるだけでどうしてこうも違うのか・・・つくづく謎だ。