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夢判断 - ジークムント・フロイト

心理学・精神分析


Title: 夢判断 上 新潮文庫 フ 7-1
Author: フロイト
Price: ¥ 740
Publisher: 新潮社
Published Date:


Title: 夢判断 下  新潮文庫 フ 7-2
Author: フロイト
Price: ¥ 700
Publisher: 新潮社
Published Date:

約半年かけて読破した。
フロイトが「夢は願望充足である」という、あまりにも有名なテーゼを発表した本。

会社に入って働き始めた頃に、図書館からユングの著作集を借りて読み漁っていた時期があったのだけれど、その頃から読もう読もうと思い続けて4年以上が経過してしまっていた・・・。

第一章で非常に多くの「夢」に関する文献が取り上げられた後、第二章では彼の手によって作り上げられた「夢判断」の手法が述べられ、続く第三章で「夢は願望充足である」というこの本の中心的なテーマが語られる。
第四章から第六章で「夢」がいかなるプロセスによって作られるか、ということが実例や彼の理論を用いて説明され、第七章で彼の「夢判断」理論と心理学との関係が語られる。

2006年の9月に、積読状態になっていたこの本の上巻を持って八ヶ岳の登山に行ったのが読み始め。行きの電車やテントの中で第二章か三章まで読み進み、快調なスタートではあったもののそれから先が厳しかった。
正直いって、第四章以降の夢の生成に関する説明部分はあまりにも冗長すぎる。興味深い部分も多いのだけれど、あまりにも多くの分析例や、それに対する自分の理論の解説が延々と続くので、超人的な精神力と体力を持っていないと、連続して読み続けていくことは難しい。上巻の後半部分で気力を吸い取られ、分厚い下巻を手にしたときは読破できるとは到底思えなかった。

とはいえ、この本によって彼が心理学・精神医学、それに沢山の好奇心に満ちあふれた読者達に与えた影響は計り知れない。そういう意味で、ダーウィンの「種の起源」にも似たような重み(物理的にも、歴史的にも)を持った本だと言うことができるのかも知れない。

彼のテーゼが世の中に浸透し、他に多くの優れた「夢」に関する理論が提出されている今、この本をあえて読む意味はそこまで大きくないように思う。それでも、フロイトという綿密な思考能力と観察能力を持った人が「夢」という摩訶不思議なものに真っ向から挑み、まっとうな理屈をつけていくプロセスは非常に興味深い。ある意味、この本で試されるのはフロイトの英知ではなくて読者の思考能力なのかもしれない。「古典」とは、多かれ少なかれそういった性質をもつものなのだと思う。