私は魔境に生きた - 島田覚夫
ノンフィクション
猛烈な体験が綴られた本。
著者は旧日本陸軍としてニューギニアに派遣され、周りを敵に囲まれた挙げ句に奥地での籠城作戦を決意し、戦後までの10年間をジャングルの中で過ごした。
まず何よりも、著者を含めた四人の日本人の強烈な「生きる姿勢」が伝わってくる。つい最近読んだ「エンデュアランス号漂流」に描かれている英国人探検家シャクルトン一行の狩猟民族的な「生きる姿勢」に比べ、ジャングルで農園を開拓していった彼らの「生きる姿勢」には、農耕民族的特性が強く現れている。生きていくためにあれこれ手を尽くし、コツコツと苦労を重ねながら生き延びることができた四人ともが農村の出身であった、というのは偶然の一致ではあるまい。
ひとつひとつのイベントが時系列でよく整理されて並んでいて、とても読みやすい。国民総動員という態勢の中で徴兵され、日本軍の再来を信じ続けながら暮らした彼らの心理的変化も非常に興味深い。米軍の襲撃に怯えながら日本軍が残した集積所の食料に依存する生活から、少しずつ自給自足の生活へと移行していく見事なまでの適応力も読み応えがある。とにかく、人間が生きていくためには「食う」ことが一番大事なのだな、と改めて思う。
ジャングルの中で生きる現地民の描写もとても面白い。
それにしても、10年間もの長い期間の記録をまともなメモや日記もなしによくここまで克明に再現できたものだと感心する。沢山の人たちの死や、自分自身の生と死をさまようような強烈な体験があったからこそ、このような体験を全て思い出すことができるのだろう。
人の運命や、生きること、努力すること、諦めないことについて色々と教えてくれる素晴らしい本。