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春宵十話 - 岡潔

エッセイ・対談


「数学とは、魂を燃焼させることです」と言い切った、稀代の数学者・岡潔さんの本。正確には、彼が話したことを文章に起こした本。

くどいほどまでに「情緒」という言葉を織り交ぜながら、現代の教育という問題にしつこいまでに言及している。
何よりも「調和」ということが大切である、とか、隙間が大切だ、とか、しまいにはトンデモ科学的な発言も飛び出したりするのだけれど、全体を通して岡潔さんが非常に優れたジェネラリストで、数学というのはあくまで彼にとって彼の世界観をまとめているひとつの「何か」でしかないのだなぁ・・・という感想を持った。

芭蕉から漱石、孔子からアインシュタイン、さらにはドストエフスキーまで、俳句から絵画、小説から物理学まで、何から何までが彼の世界観の中に自然な形で組み込まれていることに驚かされる。
自分も、特別な何かにとらわれすぎずに物事をトータルに見ることが出来ればよいなぁ、と常々思っているのだけれど、まだまだ努力が足りないことによく気が付いた。もっと、もっと、じっくりとよく考える必要があるのだ。

岡潔さんの説いている教育のあり方はとても興味深い。
サラっと読んでしまうとあまりにもアヴァンギャルドなことを言っているように思えるけれど、よくよく読んでいると彼の目が教育ということの、人間が人間としてどうあるべきか、ということの、中心点をしっかり見据えていることに気づかされた。