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思想としての近代経済学 - 森嶋通夫

経済学・社会学


優れた本。
「市場経済」が発見されあとの、セイ法則(アダム・スミスのいう「神の見えざる手」が正しいことを前提とし、供給は常に需要を作り上げるものとする)に振り回された近代経済学のキーパーソンを通じて、数字だけで表現できない経済学の世界を紹介している。

経済学に関する本や教科書を読んでいていつも腑に落ちない思いをするのだけれど、森嶋通夫さんの文章を読んでいるとなぜ自分がそう思っていて、そしてなぜそれでも経済学が存在するべきかが漠然と理解できる気がする。

「なぜ中央銀行はお金を作り続けるのか」という素朴な疑問に対するひとつ回答として、「セイ法則が成立しない現実世界では、連続的な投資が行われる必要があり、さらにその投資をより容易にするためには利子が下がる必要がある」ということを理解できた(少し違うかもしれないが)。
また、第一次大戦後のあまりにもアンフェアな戦後処理に憤慨し、経済学という切り口から問題提起を行ったケインズの功績を初めて知って単純に感動した。素晴らしい人間ってのはどの時代にも、どの分野にもいるものだ。