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三位一体モデル - 中沢新一

哲学・思想


キリスト教の伝統的な神学的構造体である「三位一体」という形態について、中沢新一さんが話した内容を分かりやすくまとめた本。
父、子、霊、という「神」を構成する要素を機能ブロックとして考えることで、近代から現代にかけて発生しているあれやこれやの現象を分かりやすく理解できる、というのがこの本の主旨。

ストイックな一神教であるイスラム教と比較すると、キリスト教が比較的早い段階で神学的理解をあ~じゃこ~じゃやっていたことがよく分かる。「霊」という曖昧かつ増殖する属性を持ったパーツを組み込むことで、キリスト教を広めていくための理論が補強されているのだ。

現代ほど「父」なる力・理論の源泉が軽んじられている時代はなかった・・と言うけれど、たしかにその通り。これは、全ての源たる「父」ではなく霊を増やすきっかけを作った「子」の存在に価値を求め、さらに「霊」という名の「価値」を広めることにその存在意義を見いだしたキリスト教による影響と言うことができるのだと思う。