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エヴェレストより高い山 - ジョン クラカワー

山登り


エヴェレストでの大量遭難を書いた「空へ」のジョン・クラカワーさんの本。彼のライターとしてキャリアの初期に、あちこちの雑誌に掲載された記事の中でも、山に関係あるものがセレクトされている。

アイスクライミングからヴォルダリング、アイガー、そしてK2からバージェス兄弟まで、12の物語に別れて70年代から80年代にかけてのクライミングのシーンが目の前に広がってくる。
「山登り」という行為に魅せられた人たちと、そして彼らをあざ笑うかのように自然の脅威を見せつける山々の魅力をたっぷり紹介している。

一番グッとくるのは、最後の若かりし著者がデヴィルズ・サムを目指した話。
いわゆるクライミング・バムと呼ばれる人種の典型例として生きていた彼は、つまらない仕事を飛び出して、「何かが変わること」を期待しながら一人アラスカを目指す。狙っていたルートの登攀には失敗するものも、相応の結果を残して下山した彼を待っていたのは「何も変わらない現実」なのだ。

やはり、ある種の人々にとってのクライミングとは一種の精神療養なのかもしれない。