北八ッ彷徨 - 山口 耀久
山登り
高かったけど、買ってよかった愛おしい本。
「北八ッ」とは北八ヶ岳の山域のことで、一般的には天狗岳よりも東に広がる八ヶ岳山脈及びそれを取り囲む豊かな樹林帯を指す。
赤岳や阿弥陀岳、それに横岳を擁する南八ヶ岳山域と比べてなだらかな山が多く、深い森と湖が多くあるのが特徴だ。
著者はこの山域を愛し、麦草峠を通る道路が開通する前の時代の北八ッの楽しかった思い出をこの本に綴っている。
詩情に溢れた素晴らしい文章で豊かな自然が描写されていて、読んでいてたまらなく山の静けさが恋しくなってくるのだ。
今では登山路が縦横に広がっている北八ッだけれど、雨池のほとりに天幕を張って筏を浮かべて歌を歌って・・・なんていう時代があったのだなぁ、と新鮮な気持ちで読むことができた。本の最後になって出てくる著者の闘病生活の記述もまた興味深い。