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最高裁物語(上・下) - 山本祐司

ノンフィクション


戦後、GHQによって新しい日本国憲法が提案された時代に産声を上げた最高裁が現代までに辿った道のりを綴った本。

戦前・戦中において、日本における司法の最高機関は大審院と呼ばれ、政治及び天皇から独立したシステムとして機能していなかったのだそうだ。
戦後の混乱と憲法発布の流れ、そして大審院から最高裁への生まれ変わりから始まり、それ以降は各章ごとに歴代の最高裁長官の仕事ぶりを紹介していくことでそれぞれの時代の最高裁の姿が描かれている。

リベラル派が台頭した時代から保守派の復権や、最高裁による様々な決定によって戦後の日本の法律制度がいかなる道のりを経て現代に至っているのか、という流れがよく分かった。
最高裁、というと「上告していくことで最終的に辿り着く、一番重たい裁判を行う場所」という認識しかなかったのだけれど、憲法や法律の判断を行ったりすることで、国内の法律制度に対して非常に大きな影響力を持つ強大な組織であるなぁ、と感じる。時代に時代に応じて少しずつ変化していく「常識」を捉えつつ、法律がカバーしえない領域においても何らかの解決手段を提示しなければいけない最高裁は、とても重たい使命を背負っているのだと思った。