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中谷宇吉郎随筆集 - 中谷宇吉郎著・樋口敬二編

エッセイ・対談


雪の研究で有名な中谷宇吉郎さんが書いた沢山の分野に渡る随筆をまとめた本。

雪の研究から南画まで、本当に沢山のトピックが並んでいる。
はじめのほうのトピックは、これまでに読んだことのある本と被った内容だったものの、西遊記に始まり原子爆弾、イグアノドン、千里眼から卵が立つ話まで・・・。

著者は戦前に自分の目で世界を見て回る貴重な体験をした日本人として、また自由な発想を持った科学者として戦中、そして戦後の時代にも日本という国に対してある種のフラストレーションを抱き続けたようだ。
例えば「障子を破るもの」に顕著に現れているけれど、日本の多くの人がロジカルに物事を考えられていない、という問題を彼は真剣に捉えていたらしいし、これは今でも変わっていない。
本当の意味での科学精神が理解されていない、という主張はファインマンさんなんかとも通じるところがあって面白い。二人ともなんでもかんでも、面白そうなものにはとりあえず手を出してみる、という姿勢を持った科学者(つまり、本の中で紹介されている「アマゾン型」の傾向を持った人)だから、ひとつの視点に凝り固まってしまうような科学のあり方に疑問を持っていたのだろう。

自由学園女子部が行った霜柱の研究についての記述がある。「好奇心」と「やる気」、それに「忍耐力」さえあれば、誰でも価値のある科学研究を行うことができる、というよい例だと思う。
要は楽しむ姿勢が重要なのだ。