銀の匙 - 中勘助
小説・詩集
しみじみよい本。
もう2,3年も前に、どこかの本屋で「岩波文庫人気投票」みたいなことをやっていて、この「銀の匙」が随分高く評価されていたので買ったのだけれど、なぜだか今の今までページを繰ることなく家の本棚に置かれたままになっていた。
ここしばらく沢山本を読んだけれど、どうもみんな殺伐としたものばかりでしんみりしたものが読みたいな、と思って偶然手に取ったのだった。
病弱に生まれ育った著者の子供時代を振り返るところから物語は始まるのだけれど、これだけリアルで優しく子供の視点で物語を綴ることに成功した人は世界的に見ても少ないのではないか、と思う。
ケストナーの自伝なんかも結構いい線いっていると思うけれど、「銀の匙」の素晴らしいところは、今では完全に見ることが出来なくなってしまった日本らしい情緒豊かな社会や人がたくさん現れることだと思う。
はじめの2,3ページは少しぎこちなくて、きっとこれがこれまでのこの本をちゃんと読まなかった理由だたのだろうと思う。
本当に久しぶりに、心の底から抱きしめたくなるような「好きな本」に出会えた。