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古道具ニコニコ堂です - 長嶋康郎

エッセイ・対談


古道具屋さんを営む長島さんが、私家版の新聞として書いた記事をまとめた本。ほのぼのした気分に浸ってしまった。

まず何よりも、長島さんのお店を訪れる変わった人たちが軽妙に描かれていて面白い。
長島さん自身もとても「古道具屋のおじさん」っぽい人で、下手に高いものに手を出したりするよりも、何かゴミのようなものを集めてきては趣味で売っているようなところがあってとてもほほえましい。
落語の火焔太鼓みたいだ。

絶妙な言語センスも素晴らしい。
きっと、長島さんの長い人生経験の中で自然と育まれてきたのだろう。色んなものや色んな人に巡り会って、本当に色んな経験をしているんだろうなぁ・・・と文章の端々から伺える。
アナログな人生を送っている人だと思った。

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改めて自分の家の中を見まして、いかに自分が「デジタルな人間」かが分かるような気がする。この本に出てくるような「ゴミなのか何なのか分からないけど、愛おしいもの」がほとんどないのだ。

今僕の目に映るもののほとんどは自分で買って揃えたもので、「物の価値」という意味でほとんど一意の価格しか持ち得ないものばかりであることに改めて驚かされる。
たくさんのDVDやCD、コンピューターやマウス、アンプやCDプレイヤーは、どれも自分にとってオンリーワンな価値を持ち得ないもので、「市場」というシステムに放り出された瞬間にある一定の価格によって完全な「価値判断」がなされてしまう。
ギターやスピーカー、ソファやテーブルは純粋にそうとは言い切れないところがあるとはいえ、もう少し遊び心が欲しい。

人は、自分が生きてきた証を欲しがる。
それは例えば犬が電信柱におしっこをひっかけるようなものなんじゃないかと僕は常々思うのだけれど、世界の中で自分にとって何らかの価値があるものを見つけて、それを共有することができる時にこそ人は幸せを見いだすのだと思うのだ。