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アラスカの氷河 - 中谷宇吉郎

旅行記・写真


雪の研究で有名な著者が、世界各地に赴いて行った研究の日々を綴った紀行集。

学術的な内容をさらりと紹介しながら、現地で活躍する研究者の奮闘やその土地土地に展開する素晴らしい自然が描かれている。
本の題名になっているアラスカの氷河もさることながら、グリーンランドや満州、それにハワイ(マウナ・ケアの雪!)や北極海を漂流する氷島の描写はとても新鮮で面白い。

「雪」を読んでも思ったけれど、こういった自然現象を直接相手にした研究は、今では全てが分かっているかのように思われがちだけど、まだまだ多くのことが分かっていないこと、そしてその研究をはじめるためのエントリーポイントが想像以上に低いところにあることに驚かされる。
恐らく、本格的な成果を収めるためには一定以上の投資が必要である上に、特定の現象・事物をだけを対象とした研究に終わってしまうことで科学一般の発展に寄与しないことが懸念されているのだろう。

身の回りにある自然の不思議は人の心を豊かにする。
人生の中で多くの謎に出会い、それらと共に生きていくことは人の心にとって大いなる糧となるのだ。