南極越冬記 - 西堀 栄三郎
旅行記・写真
面白かった!
敗戦後の日本が世界と協力して、南極調査を行うための最前線基地として切り拓いた昭和基地で1年間を過ごした人たちのリーダーの記録。
この11人は本格的な観測を行う前に「無事に越冬すること」を主な目的として組織された予備越冬隊だったらしく、隊員はみな研究のプロではないがそれぞれのフィールドで卓越した力を持った人たちばかり・・・。
富山県・芦峅寺の佐伯さんや、犬ぞりのスペシャリスト、それにエンジニアやドクターなどなど。
沢山の予測不能な自体が隊員たちを襲うものの、強烈なリーダーシップのもとに逞しく困難を乗り越えていく記述がとてもよい。
一説によると、この本は梅棹忠雄さんによるゴーストライティングらしいのだけれど、全ての元ネタは西堀 栄三郎さんによる日記の断片によるものなので、ノンフィクションとしてのダイナミズムは全く失われていない。
越冬後に引き続いて観測を行うはずであった第二次越冬隊は、結局南極の氷に阻まれて基地にたどり着くことが出来なかった。
第一次隊とともに冬を越した犬達は首輪をつけたまま1年間昭和基地に置いてけぼりにされたものの、奇跡的に2匹が生き残った話は映画・南極物語で描かれているので有名。
外部の世界と一切の接触がなく、かつ本当に沢山のリスクに囲まれた生活の描写としても非常に優れているし、西堀さんという人間を支え続けた研究者魂(または好奇心)の真髄があちらこちらで描かれていて、とても面白い読書であった。