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新約聖書はなぜギリシア語で書かれたか - 加藤隆

宗教・人類学


どこかの本屋で見つけて図書館で借りてみた。
新約聖書の成り立ちから、初期キリスト教の権威であったエルサレム教会、それにイエスの時代のユダヤ人社会の解説まで、細かいところまで手が届いている本。

マルコ・ルカ・マタイによる福音書は「共感福音書」と呼ばれているらしい。研究の結果によると、ルカ・マタイの底本としてマルコによる福音書が存在し、さらにもうひとつの底本によってルカ・マタイはそれぞれ独自の部分(一部はルカ・マタイで共通)を足したもの、とされるのだそうだ。

著者の考察によると、「始まりの福音書」と考えられるマルコによる福音書は、イエスの死後初期のキリスト教(ナザレ派)の権威を持っていたイエスの直接の使徒達(アラム語しか話さず、みな生粋のユダヤ人)に独占されていたイエスの教えを当時の国際語であったギリシャ語でまとめることにより、キリスト教を世界的宗教にするためのきっかけを作った、と考えることができるらしい。

「聖書」と聞くと自動的にあの分厚い本を思い浮かべてしまうけれど、あの本が成立するためには数々の苦労や葛藤、それに対立があったのだろうなぁ・・・と思い知らされた。