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垂直の記憶 - 山野井泰史

山登り


山野井さん自身の手によるクライミングの記録。
全てヒマラヤ山系に属する高峰で、アルパインスタイルによるスピーディーな登攀が描かれている。

彼がソロ・クライミングで感じる心の落ち着きや充実感の表現にとても強く共感する。何回かのパーティーでの登山も記憶されていてそれはそれで充実したものもあったようだけれど、「山を登る」という行為を一番シンプルな形で実践しよう、となると、大きなパーティーになるのは色んな意味で苦痛なのだろう。

例えば、彼が初めてチャレンジした8,000峰のブロードピークへは日本の登山隊の一員として行っているのだけれど、純粋に「山を楽しむ」、という行為が損なわれた点に関して、「それぞれ良い人ばかりだったが、隊員どおしのあまりにも複雑な心の動きばかりが気になる登山だったと思う」と書いている。

山に限らず、何事においても自分の主観によってあらゆる局面に対してアナログに接していくことにこそ、生きる楽しみがある。こと山に関して言えば、山野井さんという人はこの点を知り抜いている人だと思った。