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デジタル音楽の行方 - David Kusek & Gerd Leonhard

コンピューター


デジタル技術がどのように音楽業界を変えつつあるか、ということについて論じられた本で、一番よくまとまった本。
何せ、本を書いているのがMIDI規格の開発に携わった人と、音楽ビジネスの前線で活躍している人なのだから、当然と言えば当然。やっぱりちゃんと分かってる人は分かっているのね、という内容。

商品パッケージとしての音楽が、ただ単純にモノであったり客寄せ目的で売られている、という事実を「問題」である、と思えるくらいの常識人であれば、この本で論じられている内容があてずっぼうに書かれた夢物語ではないことがよく分かると思う。

本の中で繰り返し繰り返し言われているけれど、結局技術の進化によって何か新しいことができてしまうようになった場合、その技術は何らかの本質的なメリットを本質的に関係している人たちに*のみ*与えることになる。だから、仮にデジタル音楽がタダで手にはいるようになったからって音楽業界ってものがなくなってしまうわけではなくて、音楽を作る人も聴く人も、それを選別したり広めようとしたりする人も存在し続ける。単純に、これらのプロセスがより効率的になって、音楽を聴く人にとってより音楽が身近になるだけのことだ。「音楽」という文化の根幹部分には全く影響を与えない。何と言ってもイケてる音楽はいつだってイケてるし、イケてない音楽はいつまでたってもイケてないのだから。

個人的には、これまで類似本を何冊も読んでいる上に普段から本で取り上げられているようなことを考えているので70%くらいは「あぁ、そうだよね」ってな感じでペラペラ読んでしまった。

図書館に置いていないので、しかたなく自分で買ったのだけど、
チープなノリの表紙がイケてないことを除けば、技術的な話も、音楽文化、ビジネスサイドの話も全て適切によくまとめられている良い本だと思う。